2011 Fiscal Year Research-status Report
新規微小結晶マウント法とキセノン加圧誘導体調製法の開発
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23600016
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
熊坂 崇 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主席研究員 (30291066)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 試料処理 / 機器分析 / 結晶解析 / 蛋白質 |
Research Abstract |
今年度は以下に述べる3項目を中心的に行った。 まず、「(1) ガラス細管への試料の封入方法の検討」については、試料の安定保持には有利であるが操作性にやや問題がある本法について、試料を管内に導入する方法を種々検討した。単純に片側末端部を閉じることで、指で操作し温度変化を生じさせることで管内ガス圧を調節する簡便な方法を検討したところ、若干の慣れは必要なものの、操作が十分に可能であった。一方、微小量を操作できるピペットで吸い上げる方法も検討したところ、管への吸引時に脈流が見られ、微小量の制御にはさらに検討が必要であることが明らかとなった。これらについては、管内のコーティングと新型のピペットコントローラで対応できるか検討を行っている。 次に、「(2) ガラス細管のデザイン」については、キャピラリプラーを用いて様々な形状でガラス管を加工したところ、形状をテーパー状にし、先端部をマイクロフォージで落とす位置を変えることで、開口サイズをさまざまに変化させながらも、剛性を保てることが確認できた。また、10um程度の微小結晶を吸い込む内径ではX線散乱等には問題がなく、おおよそ150umくらいの外径になったところで冷却効率の問題が生じることが明らかとなった。しかし、すでにこれらより太い管で凍結させる実験に成功している事例も報告されており、実際の実験では抗凍結剤の条件検討を併用することで、実施が可能であると考えられる。 また、「(3) ガス加圧法の開発」については、理化学研究所と弊所で開発している自動サンプル交換ロボット用試料ピンに接続したキャピラリを用いることで、抗凍結剤に浸したリゾチーム結晶を2MPaのキセノンガス条件においてガラス状で凍結することができ、今後の開発に支障のないことを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は実施計画をおおむね達成できた。 まず、「(1) ガラス細管への試料の封入方法の検討」については、試料を管内に導入する方法として毛細管現象による直接吸引が比較的簡単に操作できることを示した。若干の慣れは必要なものの、操作性についての問題はクリアできたと考えている。一方、微小量を操作できるピペットで吸い上げる方法も検討したところ、吸引時に脈流が見られた。これらについては、管内のコーティングと新型のピペットコントローラで対応する予定である。 次に、「(2) ガラス細管のデザイン」については、ガラス管の形状をテーパー状にすることで、ほとんど支障がないことを確認できた。また、10um程度の微小結晶を吸い込む内径ではX線散乱等には問題がないことも明らかとなり、使用に当たっての指針はほぼ確立できた。 また、「(3) ガス加圧法の開発」については、自動サンプル交換ロボット用試料ピンに取り付けたキャピラリを用いることで、抗凍結剤に浸したリゾチーム結晶を2MPaのキセノンガス条件においてガラス状で凍結することができ、今後の開発に問題がないことを確認した。 (1),(2)の結果については報文としてまとめ、投稿を済ませた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず「(1) ガラス細管への試料の封入方法の検討」については、残されたピペットコントローラ等の接続部の改良を行う。すでに図面は作成済みであり、試作品を導入して評価を行う。 次に、「(4)ガス加圧実験」については、ガス吸着性タンパク質の結晶を作成し、ガス加圧試料の調製を順次進めつつ、構造解析を行って、実験の可能性を検証する。 また、「(5) 希ガス誘導体結晶による位相決定法の開発と評価」については、予備的に行ったキセノン加圧下での実験を種々のタンパク質結晶について行い、加圧後に大気開放して凍結する従来法と比較するとともに、加圧条件と占有率の関係を評価して適切な加圧条件を探索し、より効率的な重原子誘導体作成法の開発につなげる。さらに、溶媒のコントラスト変調実験として、クリプトンやキセノンガスを用いた実験系の確立を進める。 今年度中に評価し購入を予定していた一部部品が製造元の都合等により調達できなかった。次年度にその目途が立ったため、導入する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
微小量を吸引するピペットコントローラの仕様を検討し、年度内に導入を行う予定としている。また、マウント具とピペット等との接続方法を検討し、特にロボット用マウント具については今年度中の完成を目指して、まずは試作品を作成する。 試料観察系やマウントするサンプルの調製に必要な試薬等も合わせて購入する計画である。
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