2012 Fiscal Year Research-status Report
新規微小結晶マウント法とキセノン加圧誘導体調製法の開発
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23600016
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
熊坂 崇 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 副主席研究員 (30291066)
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Keywords | 試料処理 / 機器分析 / 結晶解析 / 蛋白質 |
Research Abstract |
今年度は、当初計画していた「(4) ガス加圧法の実証実験と改良」の一部と、「(5) サンプル自動マウントロボットでの利用検討」に加え、昨年度計画の「(1) ガラス細管への試料の封入方法の検討」の一部と、(4)の発展として翌年度に計画していた「(6) 希ガス誘導体結晶による位相決定法の開発と評価」の一部について実施した。以下、概要を述べる。 (4) ガス加圧法の実証実験と改良:昨年度のキセノンガスに加え、今年度はクリプトンガスを調達して、ガス圧と結晶内のガス分子の占有率の関係を調べた。また、微小結晶に利用することを目的として開発された本マウント法を、80マイクロメートル程度の結晶にも試み、良好な回折データを取得できることを確認した。 (5) サンプル自動マウントロボットでの利用検討:ガス加圧に際してマウントロボットSPACE用のネジ式試料ピンを併用するが、同時にロボットでの試料管理が可能であることを確認した。 (1) ガラス細管への試料の封入方法の検討:結晶試料の細管への吸引に、細胞に生理活性物質を導入するマイクロインジェクション法で用いられる空圧インジェクターを適用し、良好な操作性が得られることを確認した。また、自作していたガラス細管の製作を委託することができるようになり、調達も可能となった。 (6) 希ガス誘導体結晶による位相決定法の開発と評価:キセノン及びクリプトンガスでの加圧実験を行い、リゾチーム結晶でのガス吸着を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度および今年度で予定された実施計画をおおむね順調に達成している。 まず、「(1) ガラス細管への試料の封入方法の検討」については、新たに空圧マイクロインジェクターを導入したことで操作性が格段に向上したため、広く利用者に普及させることができそうである。次に、「(3) ガス加圧法の開発」と「(4) ガス加圧法の実証実験と改良」、「(6) 希ガス誘導体結晶による位相決定法の開発と評価」は互いに関連する内容であるが、自動サンプル交換ロボット(SPACE)用試料ピンに取り付けたキャピラリを用いることで、リゾチーム結晶をキセノンガス条件においてガラス状で凍結することができ、さらにガス圧と結晶内のガス分子の占有率の関係を調べることができた。また80マイクロメートル程度の結晶でも測定を行い、位相決定可能な良好な回折データを取得できることを確認した。ただし、ミオグロビンなどのガス吸着タンパク質への試みは行えていないため、最終年度には実施したい。 また、「(5) サンプル自動マウントロボットでの利用検討」について、試料管理が可能であることの検証は済ませていたが、これまでキャピラリは自作していたために数量を確保できず、大量の試料管理を試すことができなかった。しかし、製作の請負についてある業者と約束ができそうな状況であり、来年度には実施したい。 成果発表については、昨年度に(1-2)の結果についてまとめた報文は受理され、本年度に出版された。また、(4-6)の結果について現在報文をまとめており、年内の採択を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、「(1) ガラス細管への試料の封入方法の検討」については、本年度に導入検討する予定であった新型のデジタルピペットコントローラのテストを行い、現有の空圧インジェクターよりも操作性が向上するか評価を行う。また、ガラス細管製造については、テーパー型の細管作成が可能か評価の後、仕様策定を行って、一般利用者にも調達可能な環境を構築する。これにより、「(5) サンプル自動マウントロボットでの利用検討」を検討段階から実用段階に引き上げたい。 次に、「(4)ガス加圧実験」については、ミオグロビンなどガス吸着性タンパク質の結晶を作成し、ガス加圧試料の調製を順次進めつつ、構造解析を行って本法の有効性を実証する。 また、「(6) 希ガス誘導体結晶による位相決定法の開発と評価」については、最終的に種々の誘導体作成を行なって、新規タンパク質にも適用して位相決定能の評価を行う。このために、より高占有率が可能となる高圧条件を実現すべく、加圧装置の改良とテストも同時に進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度に開発の遅れにより評価ができなかった新型デジタルピペットコントローラ(40万円程度)については、次年度にテストを行う目処がついたため、その結果を見て有用であれば、年度内に導入する。また、外注が可能となるガラス細管(キャピラリ)とそれにあった試料ピンについて十分な量(30-40万円程度)を購入し、ロボットを利用した測定環境を整備する。 また、(4)の実施に必要なガス(10-20万円程度)と、試料観察用CCDカメラやマウントするサンプルの調製に必要な試薬等も合わせて購入する。 そのほかに、研究打ち合わせ費用として旅費と学術論文の出版にかかる費用に使用する予定である。
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