2011 Fiscal Year Research-status Report
デバイス界面原子配列の可視化のためのX線定在波法の開発
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23600018
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
坂田 修身 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, ステーション長 (40215629)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 硬X線定在波 / 界面原子配列構造 / シンクロトロンX線回折 / 動力学的X線回折 / 高平行X線 / マイクロメータX線ビーム / 非破壊構造解析 / ふつうに用いられる単結晶基板 |
Research Abstract |
シンクロトロン硬X線定在波法によって、デバイスの界面原子配列を非破壊で可視化する新しいシステムを作製することが目的である。ふつうに手に入り用いられる金属結晶や酸化物結晶の基板の界面構造を原子スケールで解析できるようになる。キーポイントは、散乱面(今回は鉛直面)内における入射X線ビームの高い平行性と小さなビームサイズを両立し試料基板の結晶ドメインから動力学的X線回折の結果生じる定在波を利用することである。平成23年度では、精密4象限入射スリット、シリコン単結晶(0 0 4)のチャンネルカット、および、ビームの水平方向を集光する屈折レンズから構成される光学系システムを確立した。これによって生成されるX線ビームの鉛直面内の発散角を測定するととともに、水平面内のビームサイズ、集光による輝度のゲインを評価した。 試料基板結晶の異なる網平面に適用できるよう角度発散が非常に小さな入射X線ビームが必要である。そのためチャンネルカット結晶を2個組み合わせた。入射X線のエネルギーは12.4 keV、入射スリット0.2 mm(横)、0.1 mm(縦)に設定し、試料位置に金薄膜のナイフエッジを置き水平方向にスキャンして強度の差分曲線の半価幅をビームサイズと定義した。屈折レンズとナイフエッジとの距離を180から200 mmの範囲で変えてビームの横幅を測った。約2-5マイクロメートルであった。その場合の単位面積あたりの強度ゲインが20-30であった。さらにナイフエッジの代わりにアナライザー結晶として用いたサファイア単結晶(0 0 0 1)を設置し入射ビームに垂直な水平軸の周りに回転してそのロッキングカーブの半価幅を入射ビームの発散角と定義した。2個目のチャンネルカット結晶をブラッグ条件からのはずれ角を変えては発散角を測定した。0.7 arc secはずした場合、発散角は1.3 arc secであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年当初に交付申請書において記載した研究計画を予定通り実行できた。計画段階において周到に準備したので、達成できたと考えている。つまり、光学系システムを事前にきちんと設計していたことである。たとえば、波長を縦軸に、角度を横軸にとったDuMondダイアグラム図を正確に描画することにより、計画時に鉛直面内のX線ビームの発散角を事前に予想した。
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Strategy for Future Research Activity |
ふつうに基板として用いられる単結晶としてサファイア単結晶基板上に育成された酸化ニッケルの超薄膜を試料とし、確立したシンクロトロン硬X線定在波法を適用する。すなわち、確立した測定システムを用い、1)実際の試料からデータを測定し、2)データを解析し界面の原子配列の構造情報を得る。具体的には以下の方策を予定している。1. 測定) 試料を基板結晶のブラック角近傍でロッキングして、回折曲線と薄膜中の注目するターゲット元素からの蛍光曲線とを同時にブラッグ角からのはずれ角の関数として記録する。3次元の界面情報を得るため、平行でない網平面を選び複数の測定をする。2. 解析) 2.1 解析プログラムの作成: 基板結晶の動力学的回折効果と光学系の角度発散を考慮して、回折曲線と蛍光曲線とを計算するプログラムを作成する。ここでのポイントは実空間の原点を定義し、ブラッグ回折ごとに対応する電気感受率を計算することである。2.2 データ解析: 実験回折曲線と計算回折曲線を比べて、光学系の角度発散と基板の吸収係数を決定する。2.3 界面構造情報: 以上で求めた値を用い、実験蛍光曲線と計算蛍光曲線を比較し、界面距離と NiとOの原子層間距離とその配列のオーダー度を決定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費がが生じた状況:小生は平成23年4月から物質・材料研究機構に異動しました。科学研究費の研究と共有できる物品は機構の他の予算でまかなったため、次年度使用額が生じました。本年度は、物品費50万円、旅費80万円、その他30万円を計画している。とくに研究成果を海外の学会、および、国内学会で発表するとともに、試料作製グループを訪問し打ち合わせのため、旅費に予定より多く使う計画である。
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Research Products
(1 results)