2011 Fiscal Year Research-status Report
ワクチンによる感染症予防策に消極的な保護者の意思決定過程、リスク認識に関する研究
Project/Area Number |
23601019
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Research Institution | Kwassui Women's College |
Principal Investigator |
横尾 美智代 活水女子大学, 健康生活学部, 准教授 (00336158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早島 理 龍谷大学, 文学部, 教授 (60108272)
宮城 由美子 福岡県立大学, 看護学部, 准教授 (20353170)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 予防接種 / 小児保健 / 感染症 / anti vaccine |
Research Abstract |
研究の目的:自分の子どもにワクチンを投与せずに子育てをしている保護者に対し、育児に対する考え方や、ワクチン忌避に至るまでの意思決定過程や保護者の社会性、乳幼児の集団感染についての意識などの調査を行いワクチン忌避の理由を明らかにすることが本調査の目的である。これまでの成果:当初の研究計画通り、平成23年度は聞き取り調査対象者の募集、登録、調査を実施した。「全てのワクチンを忌避している保護者」に加えて、「一部のワクチンを忌避している保護者」、「接種は行ったが不安や悩みがあった保護者」も対象として追加募集した。調査協力者は32名、全て母親であった。居住地は九州10名、東海17名、関西5名であり、聞き取りは全て横尾が行った。平均年齢は母親が36.9(±5.4)歳、配偶者は39.6(±6.8)歳であった。一人あたりの平均子ども数(調査時点)は1.7(±0.8)人であった。 ワクチン接種状況は、全ての接種を控えている者5名(15.6%)、一部を控えている者23名(71.9%)、ワクチンを接種した者3名(9.4%)であった。一部のワクチンを控えている者の多くはポリオ(生)ワクチンであり、他にHPV、水痘、流行性耳下腺炎などの任意接種があげられた。 接種を控えている理由には、母親の感情(乳児に化学物質を入れたくない)、子育て観(ワクチンに頼らない、免疫力の高い子を育てたい)、メディアの影響(ポリオ生ワクチンに関するTV報道)、母親の信仰や志向(ホメオパシー、マクロビオティック等)などが見られた。理由数は1つが多く複数の理由から接種を控えているという例はこれまでのところ見られていない。接種の判断に家族(配偶者、実父母、義父母)が関与した例は2例(義父母が接種を説得、配偶者が接種を強行)であり、ほとんどは母親に判断と決定権が委ねられていた。聞き取り調査は平成24年度上半期も継続実施予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成24年度に開始予定であったワクチン接種を忌避している保護者を対象とした聞き取り調査を、平成23年度下半期に前倒しで開始できた点は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)聞き取り調査の継続について;1.子どもにワクチンを与えない理由、2.ワクチンを与えないという意思決定に至った過程、3.意思決定にあたって影響を受けたものあるいはヒト、4.保護者のソーシャルネットワーク、ソーシャルキャピタルの種類、5.子育てに関する考え方、母子関係、倫理観、6.ワクチンを投与することのリスク、しないことのリスク、7.保護者の基本的属性、8.子どもの身体状況及び先天性疾患の有無、9.どういう状況下であれば投与したか等について、子どもに全くワクチンを与えていない保護者、一部のワクチンを控えている保護者、接種は行ったが不安や疑問が残っている保護者を対象に個別の聞き取り調査を昨年度に継続して実施する。(2)対象者数の拡大;調査対象者は当初の計画で50名程度を想定し予算を申請していたが、すでに30名を越える調査を完了した。さらに協力者を得られる見込みがあることから、想定数の2倍の聞き取り調査(約70-80名)を目標に次年度も聞き取り調査を実施する。より多くの保護者から、意見や考えを得ることでワクチン接種に消極的な保護者の特徴を明確にする。(3)聞き取り調査対象者居住地の拡大:当初の計画では、各研究分担者のそれぞれの居住地の近くを中心に調査を実施する予定であったが、他の地方からの調査協力の申し出があり、また今年度の調査で居住地によってワクチンを忌避する保護者を取り巻く環境に違いがあるという傾向が見られた。そこで居住地とワクチン忌避保護者を取り巻く環境との関係性をさらに知るために、次年度はできるだけ予算を切り詰め、地域まで拡大して聞き取り調査を実施する。(4)諸外国の動向調査について;平成23年度に終了予定であったリテラチャーレビューによる先進諸国のanti-vaccine movementの動向調査は平成24年度も継続しまとめを発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査のクオリティを揃える目的で、保護者を対象とした聞き取りは現在、全て研究代表者が実施していること、今後も調査対象者の人数および調査地の拡大が予定されていること等から、旅費への支出が大きいこと、調査協力者への謝金(図書カード)の準備がさらに必要になったことから、次年度の研究費は物品費150,000円、旅費650,000円、人件費・謝金100,000円を予定している。内訳は物品費(文具類、パソコン、プリンター消耗品、図書等)、旅費(聞き取り調査、学会発表、研究打ち合わせ)、人件費・謝金(聞き取り調査協力者への謝礼)を予定している。
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