2012 Fiscal Year Research-status Report
ワクチンによる感染症予防策に消極的な保護者の意思決定過程、リスク認識に関する研究
Project/Area Number |
23601019
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Research Institution | Nishikyushu University |
Principal Investigator |
横尾 美智代 西九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00336158)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早島 理 龍谷大学, 文学部, 教授 (60108272)
宮城 由美子 福岡県立大学, 看護学部, 准教授 (20353170)
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Keywords | 予防接種 / 小児保健 / 感染症 / anti vaccine / 聞き取り調査 |
Research Abstract |
我が子に予防接種を投与することなく育児を行っている保護者に対し、忌避の理由、そこに至るまでの意思決定過程、乳幼児の集団感染についての知識など、個別の聞き取り調査から得られた情報を集約し、予防接種忌避保護者に共通する特徴と対応方法を探ることが本調査の目的である。 本年度、予定数以上の保護者(約50名)の協力を得た。調査参加保護者の平均年齢(±SD)は、28.0(±3.7)歳、全体の約半数が大卒・大学院卒であった。年間世帯収入の中央値は550万円、主観的暮らしぶりは80%以上が「普通」または「余裕がある」と回答していた。参加者全体の20%(10名)が完全拒否者であった。その理由は、地理的要因、法的拘束力の問題、情報の偏向性と情報不足、保護者の感情・子育て方針の4つに(暫定的に)大別された。特に「情報の偏向性と情報不足」の内訳には“成分や副作用の情報から(4/10)”“種類の多さから(4/10)”“納得できない(2/10)”が見られた。「保護者の感情・子育て方針」には“代替物としての食物への期待、こだわり(6/10)”“児自身の自己免疫力への期待(6/10)”“医療への忌避感、不信感(3/10)”などがみられた。保護者の意思決定を支えた存在には、ホメオパシー、宗教、マクロビオティック等があげられた。保護者自身の非接種例は1名のみであった。先行研究と共通する特徴(高学歴、高収入)が見られた一方、地理的要因(医療機関へのアクセスのよさから予防策を拒否)は、新しい知見であった。また、保護者が「自然な子育てをしたいので(接種を拒否する)」と述べていたことは興味深い知見である。予防接種が予防ではなく非自然という記号で語られている点は、保護者への対応方法を探る際の手がかりとなる。高学歴であるにもかかわらず一部保護者には予防接種への誤解(1歳をすぎて受けたい等)があることも新たな知見であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ー大学間異動による研究の一時的遅滞について 計画では平成24年度中に聞き取り調査を終了する予定であったが、昨年度途中に活水女子大学から西九州大学へ勤務先を異動したため、それに伴う雑事等により昨年度下半期は調査出張が困難な状況であった。既に昨年度中に協力の申し出を受けているケースに対しては平成25年度上半期に聞き取り調査を実施し、平行してデータ解析調査を行う。平成25年度上半期に予定していたはフォーカスグループインタビューは本年度下半期のできるだけ早い時期に実施することで遅れを取り戻す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 聞き取り調査の継続について:平成23-24年度に実施してきた予防接種を忌避する保護者を対象とした聞き取り調査を平成25年度上半期も継続実施する。当初の計画で想定していた調査対象者数(約50名)を超えた協力が期待されるため、エビデンス向上のためにもできるだけ多くの保護者から聞き取りを行う。 2. フォーカスグループインタビューの実施:予防接種を与えて子育てを行っている(行っていた)保護者、第一子を妊娠中の妊婦でそれぞれ2つのフォーカスグループを作成し、予防接種忌避保護者の意見や考え、理由について説明し、親の立場あるいはこれから子どもを持つ立場からどう考えるか、ディスカッションしてもらう。 3. 調査対象地域の拡大について:居住地が近い予防接種忌避保護者は同じ育児サークルであったり、友人であったりするため、接種理由や忌避の過程が類似している例がおおい。そこで当初の予定では居住地を限定して調査を実施する予定であったが、さらに調査範囲を拡大し、多様な理由を収集しエビデンスの向上を図る。 4. 論文化および今後の研究の方向性についての検討:すでに2回の学会発表(第71回日本公衆衛生学会総会、第16回日本ワクチン学会)を終えて、本研究に対する示唆も頂いた。本年度は論文あるいは著書としてまとめる作業を行い、得られた成果を広く一般に還元する。 5. 方向性の検討について:予防接種忌避保護者を対象とした感染防御対策(感染源として、被感染者としての両面から)をどのように構築するか検討し、提案することが必要だと思われる。またこれまで検討してきた倫理的側面からの問題点だけでなく、疑似科学を信奉する傾向などについても考えねばならない。また多くの保護者は集団野中での子育てという意識が欠落していた。予防接種忌避保護者が地域とどのように関わりをもっていけばよいのか検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費(550,000円) :本年度も継続して聞き取り調査を行うこと、また調査地を拡大して実施することから旅費へ の支出が大きいことが測されるため旅費に予算の半分を当てる。 物品費(300,000円):調査協力者が2名がそれぞれ必要とする物品費として30万円を計上する。 人件費・謝金(150,000円):フォーカスグループインタビュー等調査協力者への謝金、聞き取り調査のテープ起こ し等の人件費に15万円を当てる。 その他(100,000円):英文論文投稿に必要な校正、投稿料等のためにその他に10万円を予定する。
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Research Products
(6 results)