2013 Fiscal Year Annual Research Report
ワクチンによる感染症予防策に消極的な保護者の意思決定過程、リスク認識に関する研究
Project/Area Number |
23601019
|
Research Institution | Nishikyushu University |
Principal Investigator |
横尾 美智代 西九州大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00336158)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早島 理 龍谷大学, 文学部, 教授 (60108272)
宮城 由美子 福岡県立大学, 看護学部, 准教授 (20353170)
|
Keywords | 予防接種 / 小児保健 / 感染症 / anti vaccine / 聞き取り調査 |
Research Abstract |
乳幼児の感染症対策の研究として、自児への予防接種を拒否している保護者と接種に強い不安を持つ保護者を対象に個別聞き取り調査を実施した。 全国各地で調査に協力して下さった者は60名であった。高学歴の専業主婦が多く年齢層も高かった。世帯年収の中央値(最小―最大)は600(200-1500)万円で経済的にも安定していた。接種拒否者(20名/61名)の理由は「情報の偏向性、情報不足」、「児の免疫力への過信」「子育て方針、感情」、「法的拘束力(がない)」、「地理的要因(緊急時の救急外来の利用可能)」の4点に集約された。保護者には誤解や思い込み、感染症の知識と危機感の不足、代替医療への依存がみられた。保護者は育児に熱心かつ丁寧で、育児サークル等にも積極的に参加する社会性の高い者が多かった。乳幼児のケアの知識と家庭看護力があり、病院利用を極力控える育児を心がけていた。多くの保護者が「自然を大切にした子育て」を育児方針の1つとし、遊具や食事、水、オムツ等にこだわりがあった。その延長線上で『ワクチン=自然ではない(naturalでない)』いう発想から「異物(化学的物質)を児に与えたくない」ことを拒否の理由とする保護者は少なくなかった。 自児(ワクチン未接種児)が他者から「ワクチンで予防可能な感染症」をうつされるリスクについては、全ての接種拒否保護者から「想定内であり、仕方がない。責任は接種を拒否した私にある、甘受する。」という責任感が見られた。ところが、逆の場合を想定した問い、つまり自児が他者(接種年齢未到達児や免疫機能低下者等)へ当該疾患を感染させる可能性とその責任の所在については、明確な回答は1名(宗教的上の拒否者)のみであった。つまり対象者の予防接種拒否は「我が子」のみへのリスクの判断であり、感染症の特徴である共同体の中での相互感染リスク意識が欠落していることが問題として示唆された。
|
Research Products
(11 results)