2011 Fiscal Year Research-status Report
言語とコミュニケーションスキル発達の生態学的基盤としての環境の記述
Project/Area Number |
23601020
|
Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
鈴木 健太郎 札幌学院大学, 人文学部, 准教授 (10308223)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石黒 広昭 立教大学, 文学部, 教授 (00232281)
麻生 武 奈良女子大学, その他の研究科, 教授 (70184132)
佐々木 正人 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10134248)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 言語獲得 / 言語環境 / 母子コミュニケーション / 生態学的記述 |
Research Abstract |
本研究は、母子の物を介したやりとりを分析することで乳児の言語的体験要素を抽出し、その成果を言語とコミュニケーションスキル発達の生態学的基盤となる環境の記述に発展させることを目的としている。この目的、及び研究実施計画に沿って、平成23年度は、前言語期の乳児のいる協力家庭への観察調査を開始し、取得したデータの一部について試行的な分析を行った。 募集に応じた3組の母子について、それぞれの乳児の生後6~24カ月の期間に毎月一回のペースで調査者が家庭を訪問し、母子やりとり場面の観察調査を行った。各8分間の3セッション、すなわち、母子の家庭にある玩具や絵本を用いてふだんと同様の仕方でやりとりを行うセッション1、調査者の用意した数種類の玩具のいずれかでやりとりを行うセッション2、玩具セットと共に配した7冊の絵本のいずれかを用いてやりとりを行うセッション3をこの順番で小休止をはさんで行っている。なお、玩具セットは、振ると音が鳴るもの、積み木、車、絵合わせ、木の人形とぬいぐるみから構成したものである。 当年度末までに、母子3組の生後6~12カ月の観察データを取得した。このうち一組の母子の生後6~9カ月の縦断データについて、以下の3通りの分析を行った。1)母子の相互行為過程を分析し、乳児の発声・発語を促進する展開パターンを抽出した。各月齢の相互行為には特有の展開パターンがあり、この期間の母子相互行為には、乳児の発声自体よりも、物、行為、事象と共起する「声」を聴く・予期することを促進する作用があること示唆した。2)「繰り返し生じる物の配置変化」によるイベントが、母子相互行為を構造化することに関わっていることを、積み木の積み上げ-崩しを繰り返す場面について具体的に描写した。3)言語と一体に発話行為をなすとされる自発的ジェスチャーの原初的な現れについて、観察データをもとに検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3カ年の研究計画のうち、平成23年度末までに実施を目指した研究協力家庭の募集、募集に応じた家庭への調査開始、および、年度内に取得したデータの分析着手についておおむね達成した。分析作業では、早期に得られた生後6~9カ月のデータをもとに、母子のやりとりに伴う3つの事象、すなわち、「物の配置変化」、「発声・発話と行為の展開」、「原初的な自発的ジェスチャー」についてそれぞれ分析を試み、その成果をまとめ、年度末に開催された日本発達心理学会大会において3件の学会発表を行った。 研究組織メンバーによる研究会合・研究会を年度内に4回実施し、データ分析の方法の検討、入手したデータ及びその分析結果をもとにした理論的な検討をすすめた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に開始した協力家庭の母子3組について、引き続き母子やりとり場面の調査をすすめ、平成24年度内にほぼ完了することを目指す。それと平行して分析作業をすすめる。調査・分析は、謝金・人件費を活用して、調査や分析に必要な人的補助を得ながら推進する。まず、平成24年度前半に、生後10~12カ月の観察データを分析し、研究組織メンバー間の検討を経てその成果を学会発表する。データの集積と分析の進展にあわせて、適宜、研究組織メンバーとの研究会合を開き、理論的検討を行い、研究期間最終年度の平成25年度における研究とりまとめの下地をつくることを目指す。また、中間報告的な学会発表を平成24年度末の時期に行うことを目指す。 「次年度使用額」は、主に、研究組織メンバーによる研究会合の開催地を、当初予定していた研究代表者の拠点である北海道から他の複数メンバーの拠点である東京に変更したことによって発生した。平成24年度以降は、研究データが集積し、分析も進展する見込みであることから、データと分析作業を統括する研究代表者の拠点で研究会合を開く必要が高まるため、当該研究費は旅費に充当する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品費:参考資料とする言語発達関係書籍の購入に計38千円をあてる予定である。 消耗品費:観察調査の継続・展開の諸経費、集積した観察データの保管に必要なストレージ機器の購入、およびデータ分析に必要な解析ソフトの購入、さらに、分析の進展による一部研究成果の発表準備に必要な機器の購入のために、計306千円をあてる予定である。 旅費:研究組織メンバーによる研究会合や研究会の開催に必要な旅費に計825千円をあてる予定である。この旅費と平成23年度収支で発生した「次年度使用額」とにより、研究会合・研究会を積極的に開催して分析結果の検討や理論的検討を推進する。 謝金:観察調査・データ整理等を支援する人員に支払う謝金、及び研究協力家庭への謝礼の費用に計491千円をあてる予定である。 その他:研究組織メンバー間、及び研究協力家庭との連絡用の郵送費、会合時の資料コピー費として、40千円をあてる予定である。
|
Research Products
(3 results)