2011 Fiscal Year Research-status Report
非正規雇用により生じる社会経済格差が家族の健康に及ぼす影響
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23601022
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
錦谷 まりこ 福岡女子大学, 文理学部, 准教授 (40327333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢野 栄二 帝京大学, 医学部, 教授 (50114690)
中尾 睦宏 帝京大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80282614)
鶴ヶ野 しのぶ 帝京大学, 医学部, その他 (10359630)
井上 まり子 帝京大学, 公私立大学の部局等, 助教 (20508048)
可知 悠子 帝京大学, 医学部, 助教 (10579337)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 格差と健康 / 非正規雇用者 / APC分析 / 家族 / 共同体 |
Research Abstract |
非正規雇用者の健康状態について、国内外の査読済み研究報告論文を精査し、国内の科学雑誌にレビューとして報告した。 さらに、近年の国民の健康状態について、厚生労働省が調査している統計「国民生活基礎調査」の過去数年分のデータを用いて、雇用者の健康に関して経時的変化を分析した。その結果、通院率や有訴率、健康感不良率など、いずれも健康指標が2004年以降悪化傾向にあることが示されたため、この内容を論文として国際誌に報告した。なお、、この研究において、雇用形態ごとに健康の経時変化を分析したが、横断的に健康状態が良いとされる正規雇用者のほうがむしろ経年的に悪化傾向を示し、非正規雇用者の集団だけが悪化しているわけではないことが示された。本研究の仮説として、近年の雇用構造の変化が条件の悪い集団の健康問題を生じるだけではなく、その集団を含む社会全体へ影響することを予想しており、その一部を示唆する結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国民の健康状態の経時的変化と世帯を中心にしたコミュニティと健康の関係について調査する予定であったが、そのための経時分析についての解析手段(APC分析:age-period-cohort analysis)について検討することに時間がかかった。よって、当初の予定では、国の各種基幹統計の目的外使用申請の手続きを23年度中に行う予定であったが、間に合わなかった。さらに小規模調査または得られた統計資料の調整等を行う予定であったが、これらも実行できなかった。 しかし、経時分析に関して行った23年度の研究検討結果を社会医学系の国際誌に報告し、認められたので、これを応用して今後の研究を進める指針ができたと前向きに考える。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度に計画していた国の基幹統計および一般統計の目的外使用申請の手続きを進める。具体的には国民生活基礎調査、国民健康・栄養調査(国民栄養調査)、全国家庭児童調査である。 統計情報が得られたら調査年度や調査票を一定条件のもと突合させて解析を行う。目的は「雇用者」を基準としたときの、「同居の家族」の健康状態を比較することなので、解析に適切な構造のデータを組み立てることとなる。評価する健康アウトカムは「主観的な健康状態」「通院などの客観的健康状態」「生活習慣」などである。 影響する因子として、家族などのほか、地域等の特色を考慮または明らかにするため、地域情報についても検討する。地域情報については、家族と同様に共同体としての結びつきを見たいため、市町村レベルのデータを収集することを予定している。収集対象は「雇用対策」「教育」「環境」等のデータを想定している。 また、家族の健康に関して、同窓会組織等への協力を要請して調査協力者の住所情報を得、家族形態と就業形態、健康等の質問紙調査を行う予定である。協力依頼は数か所を想定しており、少なくとも1か所から承諾を得るつもりであるが、万が一承諾が得られない場合は上記に述べた市町村レベルデータを収集することで「雇用者」とそれを取り巻く「地域住民の健康」という形で研究を推進する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
多量のデータを処理するため、コンピュータの演算処理機能を十分高いものにして臨み、期限内に解析できるよう対処する必要がある。したがってCPU、RAMともスペックの高いコンピュータを購入する予定である。 また、国の基幹・一般統計を処理するほかに、地域共同体のデータを収集する際は「インターネットによる検索」「自治体へのメール、郵便、電話などでの問い合わせ」などを予定しており、そのための研究補助アルバイトを1-2人短期的に雇用する予定である。質問紙調査を実施する場合はさらに数人雇用することが考えらる。いずれも、通信費や郵送料等に費用が掛かる見込みである。 得られたデータで解析後、関連学会へ報告するため、学会参加費および遠隔である場合は出張旅費なども支出予定である。さらに論文化する際には国際誌へ投稿する予定であるため、英文校正、投稿費用、なども支出する。 当然のことながら、研究遂行にあたって、分担研究者の協力が必要で、随時打ち合わせ等を行う。分担研究者は遠隔にいるため、打ち合わせ用の出張旅費もかかる予定である。
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Research Products
(4 results)