2011 Fiscal Year Research-status Report
子どもの精神病発症リスクの同定とメンタルヘルス向上のための包括的介入モデルの構築
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23601025
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
濱崎 由紀子 京都女子大学, 現代社会学部, 准教授 (50328051)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深尾 憲二朗 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60359817)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 児童精神医学 / 環境保健 / 予防医学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、前精神病状態にある子どもの病態システムを解明し、リスク群に対しては発症予防と早期治療のための医療的アルゴリズムを、正常群の子どもに対しては個々の心理特性と現代社会の特徴を踏まえた、メンタルヘルス向上のために望ましい環境調整のあり方を提案することである。このため、まず、子どもの基底障害階層モデルを完成させ、この階層モデルを基盤に、精神病発症予防・早期診断・早期治療アルゴリズム・環境調整等の包括的介入モデルを構築することを計画した。 具体的には精神病患者群・正常群を対象にした遡及的調査研究による子どもに特有の基底症状の同定、子どものリスク群スクリーニング・ツールの開発、調査結果の精神病理学的検討による子どもの基底障害階層モデルの確立、子どものメンタルヘルスに関与する現代社会環境要因の検討、医療的アルゴリズムに加えて環境調整などの予防的介入を含んだ包括的介入モデルの構築が主な研究内容である。 平成23年度の研究内容としては、1)遡及的アンケート調査と、2)子どものリスク群スクリーニング・ツールの開発を計画した。平成24年3月時点で、データ収集量は当初計画量に達していないが、既に以下の知見を得ている。 統合失調症患者30人、コントロール群200人を対象として、CBCLを用いた遡及的かつ記述統計学的研究を行った結果、統合失調症患者の児童期に既にサブクリニカルな心理・行動特性が存在することが明らかになった。判別分析ではCBCLの全項目を用いた場合、hit-rate94,6%で両群が正しく分類されることが示された。この統計解析で得られた判別関数を用いて、児童期早期に統合失調症発症リスク群をスクリーニングするツール(ソフトウェア)を開発することができる。このツールはリスク群に対して早期かつ包括的な介入を行うことを可能とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度の研究内容としては、1)遡及的アンケート調査と、2)子どものリスク群スクリーニング・ツールの開発を計画していた。アンケート調査のデータ収集量としては当初、20歳台の統合失調症患者150名および健常者150名を計画していた。しかし平成24年3月時点で、患者30名および健常者200名となっており、患者データの収集が遅れている。これは当該研究についての患者からのインフォームドコンセントの取得が当初の予想以上に難渋したことに起因する。今後は、調査協力いただく京大病院精神神経科および滋賀里病院外来担当の研究協力者を増員し、データ収集のスピードアップを図る。また、データ収集量の不足により開発中のスクリーニング・ツールは未だ精度を欠く状態にある。
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Strategy for Future Research Activity |
1)引き続き遡及的アンケート調査およびデータ処理作業を行う。2)上記統計学的研究で明らかになった発症リスク因子を検証し、多因子の組み合わせを考慮した「子どもに特有の基底障害のメカニズム」を解明する。また、生物学的基礎研究における最新の知見を合わせて検証し、基底障害論に組み込む。ここまでの研究内容について討議するため、京都大学医学研究科において「子どもの前精神病状態の病態メカニズムの解明」と題してシンポジウムを開く。また、EPOS(European prediction of Psychosis Study)のメンバーとワークショップを開き、リスク群早期同定について意見交換を行う。これは2013年に開催のEPA(European Psychiatric Association)国際学会期間中に開催する。3)アンケート調査から得られるデータからリスク群をスクリーニングする判別関数を求め、これを用いてスクリーニング・ツール(ソフトウェア)を開発する。4)「子どもの基底障害階層モデル」について得られた研究結果をとりまとめ、国内および国際学会で成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1)遡及的アンケート調査・データ処理作業に要する人件費・謝金は、平成23年度謝金残額270,000円と平成24年謝金当初予定額の400,000円を合わせた670,000円を予定している。また、アンケート作成委託費に275,000円を予定している。2)京都大学医学研究科で開催するシンポジウムおよびEPOSメンバーとのワークショップ(2013年に開催のEuropean Psychiatric Association国際学会期間中に行う)に、会議費用として、合計300,000円を予定している。3)スクリーニング・ツール(ソフトウェア)開発に用いるPCソフト費用として100,000円を予定している。4)国内および国際学会で成果の発表を行うための旅費として、合計650,000円を予定している。 以上、平成24年度の研究費として合計1,995,000円(物品費:100,000円、旅費:650,000円、人件費・謝金:670,000円、その他:575,000円)の使用を計画している。
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Research Products
(2 results)