2011 Fiscal Year Research-status Report
子どもにやさしい医療を創造するためのホスピタル・プレイに関する研究
Project/Area Number |
23601028
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Research Institution | University of Shizuoka,Shizuoka College |
Principal Investigator |
松平 千佳 静岡県立大学短期大学部, その他部局等, 准教授 (70310901)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 社会福祉関係 / 医療・福祉 / ホスピタル・プレイ |
Research Abstract |
欧米諸国では、遊びを活用して病児や障害児とその家族を支援する専門職が定着し、小児医療チームの一員として機能している。子どもの福祉に立脚したHPSもその1つであり、本研究はHPSが欧米社会に定着した歴史的経緯や文化的背景を踏まえ、日本の小児医療の中でHPSを発展させていくために必要な課題や理念、倫理を明らかにする。さらに、子どもにやさしい医療を創造すべく、子どもの福祉と医療、環境を融合した新たな学際領域の基礎を示す。本研究初年度は、実践領域の発展動向を把握するための現地調査を中心に実施し、次の研究成果が得られた。 1.米国子ども支援療法に関する現地実践調査:セラプレイは、子どもの福祉や問題について、子どもと両親との関係性という視点から、遊びを用いて支援するための専門技術である。今回の実践調査によって、セラプレイの根幹を支える理念や倫理が明らかとなり、HPSの専門性との比較検討が可能となった。その結果、社会的な問題を抱える子どもに対する遊び支援など、ホスピタル・プレイの新たな可能性が示された。 2.ホスピタル・プレイ研究動向の把握:小児医療の中でHPSが取り組む多職種協働によるホスピタル・プレイ研究に主眼を置き、英国及び米国における関連文献を収集した。そして、遊びを中心とした医療者間の連携が病児の療養環境改善に及ぼす影響を明らかにし、ホスピタル・プレイの有効性について日本の関連学会において報告した。 3.医療と遊びに対する医療者の意識調査:日本の医療者を対象とし、病児の医療や療養環境、遊びに対する認識について、聞き取り調査を実施した。調査結果から、医療者にとって子どもと遊びは切り離せない関係にあっても、医療の場に遊びの専門職が介在するか否かで両者の関係を結ぶ視点が流動的となり、そのためにホスピタル・プレイが部分的な知識や技術として捉えられる傾向にあることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目的は主に、ホスピタル・プレイ先進国の研究実践動向を把握し、HPSの専門性確立と子どもに関わる学際領域の基礎を形成することであった。 米国における現地調査によって、実践的な遊びの視点からHPSの専門性や課題が見出された。また、多職種協働によるホスピタル・プレイの効果が文献収集によって着実に整理され、研究発表などを通してその成果を社会に発信することが出来た。 以上のとおり、本年度は実践領域に関するホスピタル・プレイの知見が集約され、学際領域の基礎形成にとって必要な調査結果を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究成果を踏まえ、ホスピタル・プレイに関する国内外の研究動向調査や専門家へのインタビュー調査などを通じて、日本の小児医療に対してHPSの専門性が果たしていくべき役割を明らかにする。また、HPSの理念や活動を効果的に社会へ浸透させるため、多角的な側面から子どもと遊びの関係を捉えて研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現地スケジュールの都合から海外現地実践調査を3月に実施したため、当該調査結果資料の整理に係る研究費において未使用額が生じた。そこで今後の研究推進に向け、当該調査結果資料の整理及び分析は、未使用額分を含めて継続実施する。 上記の他、本年度の研究実績及び今後の研究推進方策を踏まえ、次年度の研究費使用計画は以下のとおりとする。1.海外HPS専門家に対するインタビュー調査実施に係る費用2.国連関連機関の国際会議への出席及び実践研究動向調査に係る費用3.ホスピタル・プレイ関連文献及び資料の収集と整理、分析に係る費用
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Research Products
(9 results)