2011 Fiscal Year Research-status Report
炭素線治療における中性子被ばくの低減化に関する研究
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23602008
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小森 雅孝 名古屋大学, 医学部, 准教授 (30392228)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 炭素線治療 / 中性子被ばく / GEANT4 |
Research Abstract |
本研究はモンテカルロシミュレーションコードGEANT4を用いて研究を行うが、計算を行うクラスターシステムの仕様策定を行った。計算の精度と速度はクラスターシステムの核となるCPUの演算速度及び、計算データの流れ、ネットワーク、ストレージシステムが重要であり。これらについて十分な検討を重ねた結果、インテル社CPU Intel Xeon Sandy Bridge(演算コア8つ搭載)を用い、並列計算結果の転送には超高速なInfiniBand QDRを用いたシステムを考案した。作成した仕様に基づき、平成24年度のなるべく早い時期に、クラスターシステムを導入する予定である。上記、仕様策定と並行してPCを用いてGEANT4でのシミュレーションを開始した。GEANT4内に放射線医学総合研究所の炭素線治療装置HIMACの照射ポートを構築した。主だったところではワブラー電磁石、散乱体、正・副線量モニター、リッジフィルター、平坦度モニター、コリメータから構成され、核子あたりのエネルギー290MeV/nの炭素線の拡大照射野が得られた。この炭素線を水に照射した際の深部線量分布、及び線量プロファイルが、計算精度が粗いながらも実測値とおおむね一致したことを確認した。さらには4コアCPUを搭載するPCを用いて、GEANT4の並列計算に関する研究も行っている。並列計算プログラムにはLAM/MPIを用いており、炭素線の深部線量分布を計算したところ使用するコア数に比例して計算速度が向上する結果が得られた。ただし、使用するコア数に依存して深部線量分布の形がわずかに変化するという課題が見受けられ、これを解決すべく研究に取り組んでいるところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は炭素線がん治療における中性子被ばくを低減化しうる固定コリメータの最適化である。研究はモンテカルロシミュレーションコードGEANT4を用いて行う。1年目にはクラスターシステムの導入、GEANT4での炭素線の基礎的シミュレーションを行う予定であった。クラスターシステムに関しては、当初考えていたスペックでは計算精度が不十分になる可能性があることがわかり、仕様の見直しを余儀なくされた。CPUにXeon Sandy Bridgeコアを、ネットワークにInfiniBand QDRを採用するなどの見直しにより、必要な計算精度を満たす仕様を策定することができた。この仕様の策定ならびにXeon Sandy Bridgeコアの発売を待つために、クラスターシステムの導入が遅れた。一方、これと並行して行ったGEANT4での基礎的シミュレーションでは、HIMACの照射ポートを構築し、計算した核子あたりのエネルギー290MeV/nの炭素線の水中での深部線量分布、線量プロファイルが実測データと一致することが確認でき、本実験でGEANT4が使用できるめどが立った。こちらはおおむね計画通り研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究におけるモンテカルロシミュレーションの計算速度を向上するために、クラスターシステムを可能な限り早い時期に導入する。クラスターシステムを導入したのちに、HIMAC治療室での炭素線治療時における中性子の線量当量のシミュレーションによる計算値と実測値が一致することを確認する。さらには仮想したHIMAC照射ポートの上流にアルミ製の固定コリメータを設置し、コリメータ開口幅の最適化を行った後、中性子の線量当量がどの程度減少するか評価する。さらにはコリメータの材質をアルミから鉄や鉛などの高速中性子の減少に適していると思われる材質に変更して、中性子の線量当量を評価する。またこれらの物質とポリエチレンなどの中性子減速材等を組み合わせてコリメータを構築することも検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究においてモンテカルロシミュレーションの計算速度を向上させるクラスターシステムの導入が予定より遅れている。すでに仕様は策定しており、次年度の可能な限り早い時期に、繰り越した研究費を用いてクラスターシステムを導入することが本研究を遂行する上で不可欠である。次年度に請求した研究費は、学会における情報収集ならびに研究報告の旅費に充てる予定である。粒子線治療の研究は日進月歩であり、絶えず情報収集を行う必要がある。日本医学物理学会学術大会が粒子線治療に関する演題が最も多く、粒子線治療施設の医学物理士が一堂に会するので、少なくとも年2回開催される学術大会には参加する必要がある。
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