2011 Fiscal Year Research-status Report
医用電磁波放射システム研究のための病理組織を含む超広帯域3次元人体等価ファントム
Project/Area Number |
23602013
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
前田 忠彦 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (40351324)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | UWBアンテナ / 人体等価ファントム / スケールモデルファントム / 眼球ファントム / 病理ファントム / 誘電率 / 導電率 / 医用レーダ |
Research Abstract |
1 成分予測技法と添加物による誘電率と導電率の可変可能範囲の研究では、広帯域における「誘電率と導電率の相互依存性」を明らかにするためにファントムを試作し添加物に対する電気特性の変化の挙動を把握した。特に、新しい組成領域の探査のため、a) CaSO4を用いた600MHz-4GHz帯用人体等価ファントム、b) UWB帯域用人体皮膚ダウンスケールファントム 等の試作から新しい実験式を開発する取り組みを統合的に進めた。2 病理組織と人体組織の電気特性の模擬に関する研究では、人体部位として乳癌と眼球に注目した研究を進めた。乳癌に関しては、まず、乳房の代表的な構成組織を選択し、これらの組織を広帯域で模擬するために目標電気特性の周波数特性を決定した。次に、乳癌ファントムの基本組成の探査を進め、等倍乳房ファントムを広帯域で実現するための基本組成を始めて明らかにした。さらに、この成果を用いて乳房ファントムの試作に発展させた。眼球に関する研究では、従来の液体型ファントムでは眼球内部の不均質構造を模擬することが出来ないため、独自の固体ファントムに注目した研究を進めた。併せて、眼球への電磁波の影響を評価するためにSAR測定実験用固体眼球ファントムに適応するためのニードル型プローブを用いた評価技術に関する研究を進め、固体ファントムに適応できる内部電磁界の新しい測定技術を手法を提案した。3 所望の病理組織に対するファントムの電気定数の許容誤差を評価するために、医用機器に採用される候補としてキャビティバックアンテナに注目し、医用レーダ装置に用いられる代表的な信号処理をモチーフとして取り上げ、リンギング特性と波形持続時間に注目し、ファントム電気定数の許容誤差をアンテナ測定の尺度から判断するための評価基準について研究を進めた。4 以上の成果を学術論文として投稿・口頭発表を行い研究成果を広く公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1 目標病理組織の電気定数を実現するためのファントム基本組成の決定:乳癌組織の電気定数の目標値を決定し、これまで進めてきたTX151、グリセリンおよびチタン酸カルシウムを主剤とする人体等価ファントム研究を、新たに病理組織を模擬するための研究領域に発展させ、悪性組織に対するモデル化のための基本組成を明らかにし、学術論文として広く公開した。これに加えて眼球に対するファントムに注目し、関連する測定・評価技術の開発を進めた。具体的には、ファントム内部の電気定数を評価するための独自のニードルプローブとその校正技術を新たに開発した。2 添加物に対する電気特性の可変範囲の研究:平成23年度は多数の組成を試作し、具体的なファントムとしてまとめてゆくことで、実験データをより有効に、また有機的に処理し、探査する成分の組成について予測する技術や手法を蓄積した。この作業を通じて、代表的な添加物による電気定数の調整可能範囲の分析を実験的に進め、添加物による「誘電率と導電率の変化の相互依存性」の関係を明らかにした。23年度の目標はファントム作製における誘電率と導電率の調整可能範囲と相互依存性を統一的に解明することであり、今後はソフトウエアを用いたデータベース化と組成発見のための新しい実験式を開発する取り組みを統合的に進める。3 電気定数の許容誤差の研究:人体近傍に配置されたアンテナの広帯域に渡る応答特性の評価指数について分析し、医用機器に採用されるアンテナの提案されてきた複数の評価指数を統合的に評価する研究に成果を上げた。さらに、具体的な人体近傍のアンテナとして複数のアンテナを提案しその成果を学術論文として公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
拡大病理ファントムと3次元病理組織ファントム形成への展開: 乳がん診断用に絞込み、その実験のための正常組織および悪性組織の電気定数と形状の洗い出しをおこなう。スケールモデルでは1.5倍から2倍のスケールモデルで病理組織ファントムの開発を進める。また、電波医用機器評価への具体的応用として、がんなどの病理組織を含めた精密3次元人体病理ファントム開発を進める。具体的には、病理的に分類される悪性組織の電気定数を模擬した上で3次元での病理組織の形状を再現できる形成技術を新たに開発する。病理組織の形状の模擬も重要であるため、ファントムの形成技術に関して加圧式の3次元ファントム形成技術について装置の試作を進める。さらに、これらの3次元病理組織ファントムに応用するためのレーダアンテナシステムの開発を進める。特に23年度に研究を進めた、キャビティバック型アンテナの広帯域化と受信画像に与える電気定数の影響を把握するための研究を進める。 病理組織を模擬するためのファントム組成の探査と決定: 23年度までに開発した、電気定数測定評価技術、実験データの処理と成分予測技法、添加物の電気定数への相互依存性の成果を結集し、目標病理組織に対する電気定数を実現するための組成の探査を戦略的に進め、人体の病理組織に対するファントムの試作条件をデータベース化する。具体的には、病理組織の分類に基づいて3年間の研究期間にまたがる網羅的な試作結果に対して多元的な解析を進め、中心周波数、周波数帯域幅、誘電率および導電率という4つのパラメータを入力条件として与えることで、ファントム作製のために必要な成分と製造プロセス条件を抽出するエキスパートシステムとして統合するための研究に着手する。このためのソフトウエアの基本アルゴリズムの開発を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1 病理組織を模擬するためのファントム組成の探査と決定: 前年度までに開発した、電気定数測定評価技術、実験データの処理と成分予測技法、添加物の電気定数への相互依存性の成果を結集し、目標病理組織に対する電気定数を実現するための組成の探査を戦略的に進める。このためには多種の薬品が必要であり脂肪ファントムに関わる油脂を含めて、試薬を購入する予算を計上する。乳房ファントムの内部や眼球ファントムの内部の電磁界を評価するための測定時プローブとして同軸型の高周波プローブ・ケーブルを購入する予算を計上する。2 拡大病理ファントムと3次元病理組織ファントム形成への展開: 乳癌診断用など代表的なものに絞込み、その実験のための正常組織および悪性組織の電気定数と形状の洗い出しをおこなう。スケールモデルでは1.5倍から2倍のスケールモデルで病理組織ファントムの開発を進める。このための薬品の購入費用、試験装置のためのプローブ作成費用、および高周波部品の買入費用を計上する。さらに電波医用機器評価への具体的応用として、病理組織を含めた精密3次元人体病理ファントム開発を進めるため、3次元ファントム形成装置を試作する。このための機構部品・3次元加圧形成枠試作部品のための予算を計上する。3 研究成果の活用を促進するため、国際学会などへの発表を積極的に行う。このための旅費、学会参加費を計上する。また学術論文誌への投稿も進め、論文投稿料を計上する。さらに、ファントムに関する研究成果を公開するためのソフトウエア・データ整備に関わる人件費も計上する。
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