2012 Fiscal Year Research-status Report
医用電磁波放射システム研究のための病理組織を含む超広帯域3次元人体等価ファントム
Project/Area Number |
23602013
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
前田 忠彦 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (40351324)
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Keywords | UWBアンテナ / 人体等価ファントム / 眼球ファントム / 病理ファントム / 医用レーダ / 誘電率 / 導電率 / スケールモデルファントム |
Research Abstract |
1 病理組織を模擬するためのファントム組成の探査: 前年度までに開発した添加物の電気定数への相互依存性の成果を基に、従来採用している電気定数調整用薬品郡に加えて、グリシンと硫酸カルシウムに注目し、電気定数に対する影響の検討を進め、超広帯域人体等価ファントム作成のための基礎資料を取得した。その結果、グリシンは比誘電率の上昇に、また硫酸カルシウムは電気定数の周波数特性の傾きの調整に適した試薬であることを明らかにした。 2 拡大アップスケール型病理ファントムと3次元病理組織ファントム形成: 皮膚および筋肉ファントムの超広帯域化に取り組み、グリシン、硫酸カルシウムに加えてポリアクリル酸ナトリウムを試薬として新たに採用し試作を進めた。その結果、600 MHz から20 GHzの帯域で、1)筋肉、2)皮膚、3)2/3筋肉の各組織を実現する新しい組成を開発した。また、2倍アップスケール病理ファントムに適用するために乳腺および乳がん病理組織ファントムを開発し、開発済の脂肪および皮膚ファントムに組み合わせることで3次元病理組織ファントム形成実験を実施した。 3 眼球および頭部簡易モデルファントムとホットスポット現象の測定:眼球および頭部に関する研究として自立性と刺入性に優れた簡易頭部固体ファントムとダイヤモンド型プローブを開発し、このプローブと非金属平面スキャナを用い眼球内ホットスポット現象を実験的に再現しエネルギー集中を確認した。 4 低リンギング広帯域放射素子によるイメージング評価:超広帯域レーダの医用応用を目的として、キャビティバックアンテナを採用し、医用レーダ装置に用いられる代表的な信号処理をモチーフとして取り上げ、波形持続時間とレーダ検知特性に注目し、ファントムの電気定数と構造の検討をすすめた。その結果、損失製媒質を内装しリンギング特性を改善する媒質条件を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1拡大病理ファントムと3次元病理組織ファントム形成への展開: 乳がん診断用の医用レーダ評価を目標とし、乳房組織を構成する主要4組織に対する2倍のスケールモデルの開発を完了した。これらの組織の具体的応用として、乳がん病理組織を含めた乳房部に対する3次元人体病理ファントム開発を進め、比較的表面の形状が単純な形成技術に取り組みレーダイメージングによる総合評価に向けた要素技術の準備を完了した。 2 眼球と簡易頭部ファントムによるホットスポット評価への展開:眼球ファントムを埋設する人体頭部の簡易モデルと刺入性にすぐれたダイヤモンド型プローブを開発した。SAR測定に向けた電界の直交3成分の識別度と給電線の影響の評価が課題であるため、これらに対する実験とシミュレーションによる評価を実施し、提案したダイヤモンド型プローブの電気特性の妥当性を確認し、今後予定している頭部詳細モデルに対する実験のための要素技術開発を完了した。 3 レーダーイメージング測定用超広帯域放射素子のリンギング特性評価への展開:人体近傍に配置されたアンテナの広帯域に渡る応答特性の評価指数について分析し、24年度までにレーダーイメージングアンテナの性能評価において使用する複数の評価指数候補を実験的に評価するための測定およびデータ処理技法を確立した。最終年度ではスペキュラーを含む3次元病理組織ファントムに対しイメージング実験を行いシステムとしての総合評価を進める。 4 スプリットリングフィルタを利用した生体検知手法の提案:人体ファントムと広帯域フィルタの研究を発展させ、広帯域のスプリットリング型バンドパスフィルタに人体手部が近接した場合の応答特性の変化を利用し、人体手部の深さ方向の高周波電気特性の分布を識別する新しい生体検知手法を提案し、その成果を学術論文として公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
1 拡大病理ファントムと3次元病理組織ファントムを用いたイメージング評価への展開: 平成24年度までに開発した病理ファントムおよび3次元病理組織ファントムを用いて医用レーダアンテナと組み合わせたイメージング評価を推進する。特に、スペキュラー構造を持つ病理組織の形成技術とスペキュラー構造の組織を埋設するファントムの層状化技術の開発をすすめる。またイメージング実験のため低リンギング特性を示す超広帯域放射素子が必要であるため、損失製媒質を内装する形式の放射素子の開発を進める。特に、平成24年度までに検討している内装媒質の自由度を上げた最適化を進める。具体的にはキャビティバック部分の形状に関して従来の平面構成という制約条件をはずして最適化を進める。また電気定数に関しては、周波数特性を含めた電気定数の最適化を推進することで超広帯域低ひずみアンテナ放射素子を開発する。 2電気定数の周波数特性を模擬するためのファントム組成設計システム: これまでに開発した、電気定数測定評価技術、実験データの処理と成分予測技法、添加物の電気定数への相互依存性の成果を統合し、目標病理組織に対する電気定数を実現するための組成の探査法の研究を進め、人体の組織に対するファントムの試作条件をデータベース化する。具体的には、組織の分類に基づいて3 年間の研究期間にまたがる網羅的な試作結果に対して多元的な解析を進め、中心周波数、周波数帯域幅、誘電率および導電率という4つのパラメータを入力条件として与えることで、ファントム作製のために必要な成分と製造プロセス条件を抽出するエキスパートシステムとして統合するための研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1 電磁波の医用応用という最終目標達成のため、スペキュラ病理組織を模擬した3次元層状乳がんファントムを形成する。このための材料として脂肪ファントムに関わる油脂を含め試薬を購入する予算を計上する。また、スペキュラ3次元層状ファントムを形成するための形成機材の試作を進める。このための機械部品・機構部品を購入する予算を計上する.また、模擬乳がん組織を含む乳房に対するレーダ検知特性を評価するたに超広帯域低ひずみアンテナシステム試作のための予算を計上する。 2 人体病理ファントムと電磁波医用技術の応用領域拡大に関わる研究調査: 平成24年度までの研究から病理組織を模擬する人体病理ファントムおよびホットスポット現象を再現できる眼球ファントムと内部電界分布の測定技術を完了しており、これらの技術の応用領域拡大が望まれる。最終年度では、当該技術の環境電磁界分野や高電磁エネルギーの生命科学分野への展開を考え、当該分野を含む周辺学術領域の国際会議・学会に複数参加することで病理ファントムの適用と電磁波の医用応用の領域拡大に関わる研究調査をおこなう。このための国際会議・学会参加関連費用の予算を計上する。また、昨年度に予定していた国際学会への参加のための予算はスケジュールが合わず、次年度に予算を繰り越しており、この予算も含めて学会参加関連予算を今年度執行する。 3 研究成果の活用を促進するため、学会への発表を積極的に行う。このための旅費、学会参加費を計上する。また学術論文誌への投稿も進め、論文投稿料を計上する。
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