2012 Fiscal Year Research-status Report
ヒト膵ベータ細胞量測定に向けた、PETプローブの探索と比較検討
Project/Area Number |
23602016
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
佐古 健生 独立行政法人理化学研究所, 細胞機能イメージング研究チーム, リサーチアソシエイト (30525556)
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Keywords | 膵ベータ細胞イメージング / PET |
Research Abstract |
まず、ヒト膵組織を用いたin vitro autoradiographyであるが、ラット膵試料を用いた検討を事前に行っており、アルコールによる後固定で自己融解を防止しつつ特異的結合の評価が可能と思われていたが、外科手術摘出ヒト試料では有効に機能せず、実験結果が安定しなかった。アルコールによる後固定の代わりに、プロテアーゼインヒビターの使用による自己融解防止も検討したが、その効果は十分でなく、想定していたプロトコールによる特異的結合の評価は困難となった。 加えて、ヒト試料の提供が少なかったことや、ガリウムジェネレーターの減衰による溶出量の減少、更にはPETプローブ合成担当者の転出により、実験回数の減少を余儀なくされたため、実験動物を用いたPET実験を重点的に行うこととした。 一方、実験動物を用いたPET実験では、2型糖尿病モデルラット及びコントロールラットを用いて、健常、軽度糖尿病、中度糖尿病でPET撮像を行い、膵臓へのPETプローブの集積と病態との相関を見た。PET画像では、健常・軽度糖尿病では膵臓への集積が確認されたが、中度糖尿病では、画像上で膵臓特異的な集積を判別することは困難なほど集積が低かった。撮像後に動物から摘出した組織での放射活性から得られたbiodistribution dataでは、血糖値と膵臓でのPETプローブ集積とに強い負の相関が認められた。 特に、軽度糖尿病では、診断基準である空腹時血糖値126㎎/dlを少し超えた149mg/dlであったにもかかわらず、膵臓でのPETプローブ集積の減少が認められたことから、血糖値が診断基準を上回る以前より膵ベータ細胞量の減少が起こっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度(平成23年度)では、健常なラットを用いた3種類の候補PETプローブによる比較を行い、有用な候補PETプローブを得ることができた。この結果は日本分子イメージング学会で発表され、最優秀発表賞を受賞することができた。 また、2年目(平成24年度)は、計画通り、2型糖尿病モデルラットを用いたPET実験を行い、前年度に得られた有用な候補PETプローブの膵臓への集積と、糖尿病の病態との相関を見た。その結果、本PETプローブの膵集積と血糖値との間に強い負の相関が認められた。特に、軽度糖尿病では、血糖値が診断基準をわずかに超えた値であったにもかかわらず、膵臓でのPETプローブの集積に減少が認められたことから、2型糖尿病でも膵ベータ細胞の減少が発症初期から起こっていることを裏付ける結果となった。 以上のように、ここまでの2年間は、いずれも計画通りに研究を行っており、PETを用いた非侵襲的な膵ベータ細胞量測定法の開発へ向けて、確実に研究を進めているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト膵組織を用いたin vitro autoradiographyは、外科手術摘出膵のため組織変性の可能性が排除できないことや、自己融解とタンパク変性による結合能の低下を十分に防止できないこと、更には、倫理委員会で承認を得たヒト膵組織を使った研究計画が平成25年3月末で終了したことから新規の試料入手ができないこと、などにより、既存の試料を用いた実験を含めて一旦留保することとする。 その一方で、動物を使ったPET実験では着実に成果が出ており、限られたPETプローブ合成の機会をそちらに割り当てることとする。特に、糖尿病の大部分を占める2型糖尿病については、興味深い結果を得ているため、N数を増やすとともに、組織学的な検討や画像解析による定量法の確立などを行っていく。 また、これまでの研究成果は、既に論文にまとめて学術誌へ投稿を行っており、現在はreviewの段階にある。今年度中には受理されるように、reviewの結果次第では追加実験も行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は60万円余りの研究費を使用せずに残ったが、これは、投稿中の論文がreview段階にあり、学術論文の費用として計上していた謝金を使わなかったことと、国際学会への参加を行わなかったために、旅費が少なかったことなどが主な理由である。 平成25年度には、2型糖尿病モデルラットを用いたPET撮像を重点的に行うため、市販されている2型糖尿病モデルラットを購入する。動物の使用数は当初の計画から変更しないが、当該モデル動物が月に1度しか収穫されないことや、病態の個体差があるため、場合によっては使用数が増える可能性もある。また、PETプローブの合成回数が限定されるため、標識する放射性核種をGa-68からCu-64に変更することを検討中である。Ga-68の場合は、センターで共用しているジェネレーターで賄えるが、Cu-64の場合はサイクロトロンで製造する必要があり、ターゲットにメッキする前駆体は高価である。現在はセンター負担となっているが、必要に応じて負担していく。 研究から得られた成果を発表するために、学会への参加や学術誌への論文投稿を行っていくが、その経費を研究費から支出する。
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Research Products
(1 results)