2011 Fiscal Year Research-status Report
酵素および生物機能高度化によるバイオエタノール高効率生産酵母の開発
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23603003
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小瀧 努 京都大学, エネルギー理工学研究所, 准教授 (70170264)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | バイオエタノール / 酵母 / キシロース / タンパク質工学 |
Research Abstract |
本研究では、すでに作成に成功している高効率キシロース-エタノール変換遺伝子組換酵母のエタノール変換効率をたんぱく質工学的および生物工学的手法により、さらに効率化することを最重要の目的として研究を遂行した。本研究を開始するまでに、すでに、キシロース代謝において鍵となる酵素のうちキシリトール脱水素酵素(XDH)の補酵素要求性を変換することにより、エタノール変換効率化を達成している。そこで本研究では、まず、もう一つのキー酵素であるキシロースレダクターゼ(XR)の補酵素要求性変異酵素の構築をタンパク質工学的手法により行った。すなわち、類似の反応を行う酵素のアミノ酸配列を比較することにより標的アミノ酸残基を同定し、どのようなアミノ酸と置換するかを決定した。実際に部位特異的置換法により変異アミノ酸を導入した変異酵素を作成して酵素活性を測定したところ、補酵素要求性の異なった変異酵素が作成できていることが分かったが、その酵素活性は野生型酵素より減少していた。そこで、そらにこの変異酵素にもう一つ変異アミノ酸を導入したところ、補酵素要求性はそのままで酵素活性が野生型程度に回復した変異酵素の作成に成功した。次に、今回作成した補酵素要求性変異XRを、すでに作成している補酵素要求性変異XDHとともに、酵母内で発現させるために、酵母内発現用プラスミドを構築し、これら2つの酵素を酵母内で発現させた。両酵素とも比較的よく発現している遺伝子組換酵母を選択し、その酵母のエタノール生産効率を測定したところ、今までに作成した遺伝子組換酵母よりさらに高効率にキシロースからのエタノール発酵生産が行われていることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、すでに作成に成功している高効率キシロース-エタノール変換遺伝子組換酵母のエタノール変換効率をたんぱく質工学的および生物工学的手法により、さらに効率化することを最重要の目的としているが、その目的に向けてキシロース代謝のキー酵素の機能変換に蛋白質工学的手法により成功し、その機能変換した酵素の導入により、たしかにエタノール変換効率の上昇に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、キー酵素の蛋白質工学的機能変換の研究は続けるが、さらに、生物機能高度化に関する以下のような研究を遂行する。すなわち、エタノールはそれ自身細胞毒性があるので高濃度アルコール発酵を行わせるためには、高濃度アルコールに対する耐性化が必要である。そこで、酵母S. cerevisiaeの全遺伝子が決定されていることを利用して網羅的遺伝子変異株のスクリーニングによりエタノール耐性酵母の単離を行い、その結果に基づいて、エタノール耐性が高度になった酵母変異株を作成する。さらに、バイオマスから糖類への変換は、物理的爆砕、化学的加水分解あるいは生物的酵素利用分解など様々な方法が行われているが、いずれの場合にも糖類の他にも種々の物質が生成されそれらの生成物による酵母の成長およびバイオエタノール生産の阻害が問題となっている。そこで、この阻害物質についても、上記の高濃度エタノール耐性化と同様の方法により、阻害物質耐性となった酵母変異株を作成する。これらの変異株を用いてキシロース―エタノール変換遺伝子組換え酵母を作成することにより、さらなる効率化を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では、遺伝子工学的手法を用いるが、そのための実験機器類は整っているため、研究費の多くの割合を、「遺伝子操作用試薬」「化学薬品」などの消耗品費にとして使用する。さらに、本研究成果を恒常的に積極的に発信するため、「国内旅費」「海外旅費」を研究成果発表に使用する。また、欧文国際雑誌に研究成果を積極的に発信するために、「英文校正」費として使用する予定である。
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