2013 Fiscal Year Annual Research Report
新しいバイオマスとしての原生動物ミドリゾウリムシの利用に関する研究
Project/Area Number |
23603004
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
細谷 浩史 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90183102)
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Keywords | ミドリゾウリムシ / 共生 / 共生藻 / 原生動物 / 遊離糖 / マルトース / グルコース / 光合成 |
Research Abstract |
代表的な原生動物の一種である繊毛虫ミドリゾウリムシの体内には、数百のクロレラに類似の共生藻が共生している。これらの共生藻は、間期のミドリゾウリムシ体内では一方向に原形質流動を行っているが、ミドリゾウリムシが分裂期に入るとその流動は停止する。また、共生藻は、ミドリゾウリムシが太陽光を浴びた状態で光合成を行い、光合成産物である遊離糖を藻類の体外に放出し、放出された遊離糖はミドリゾウリムシの体内に蓄積されている事がわかっている。現在までにこれらの遊離糖としては、マルトースやグルコースなどが明らかにされているが、遊離糖の種類の解析や蓄積の定量的な解析はなされていない。そこで、これらの事実をもとに、申請者は、現在植物性材料から精製されている遊離糖を動物細胞(ミドリゾウリムシ)から単離する事が将来可能になるのではないか、と考えた。本研究では、遊離糖のミドリゾウリムシ体内における濃度や種類を解析する事、さらには様々な培養条件下でミドリゾウリムシを培養し、遊離糖がどのように変化するか、遊離糖濃度を最大にするにはどのような培養条件が最も適しているか等を検討する事を第一の目的とした。その結果、通常の培養条件下(23度での培養や蛍光灯照射下等)でミドリゾウリムシ体内に蓄積される遊離糖濃度を元に計算すると、現行のサトウキビによる糖生産量の数パーセントの糖量となること、蓄積糖量が最大となる光照射強度や照射時間が同定された事、含有される遊離糖はグルコースが最大で、マルトースやフルクトースなど多くの糖種がミドリゾウリムシ体内に観察される事、などが明らかになった。これらの結果をもとに、新しい糖源として人類がミドリゾウリムシを利用する事は十分可能であるが、そのためには、今後ミドリゾウリムシからどれだけ効率的に各種遊離糖を単離・精製できるかどうか、その方法を具体化する事が重要である事が明らかとなった。
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