2012 Fiscal Year Research-status Report
窒素固定型シアノバクテリアを利用したバイオマス生産の基盤研究
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23603005
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
得平 茂樹 中央大学, 理工学部, 助教 (90548132)
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Keywords | バイオマス / バイオテクノロジー / ゲノム / 生体機能利用 / 応用微生物 |
Research Abstract |
光合成効率の高いシアノバクテリアは、植物に替わる新たなバイオマス資源として注目されている。しかし、現実には物質生産に利用されている例は少ない。その原因のひとつが、窒素要求性が高く、その培養に大量の窒素肥料を必要とすることにある。そこで本研究では、窒素肥料を全く必要としない窒素固定型のシアノバクテリアを用いたバイオマス生産の基盤技術を開発する。バイオ燃料の原料として利用されるグリコーゲンや脂肪酸の効率的な生産系を、遺伝子工学と代謝工学により、窒素固定型シアノバクテリアAnabaena sp. strain PCC 7120(アナベナ)において構築する。 本研究では、代謝改変に代謝系遺伝子の発現を制御する転写因子を利用する。代謝の制御に関わる転写因子は、ある代謝系を構成する複数の遺伝子発現を一括して制御し、代謝系全体を効率的に調節する。昨年度はグリコーゲン分解と解糖系を制御する2個の転写因子NrrAとSigEを同定した。そして、これらの転写因子の改変により、細胞内のグリコーゲン蓄積量を増加させることに成功した。本年度は、新たにスクロース合成を制御する転写因子OrrAの同定に成功した。アナベナは細胞内にスクロースを大量に蓄積することが知られている。したがって、有用バイオマスの生産量を増加させるためには、スクロース含量を低下させグリコーゲンや脂肪酸合成に利用される炭素量を増やす必要がある。orrA遺伝子破壊株では、スクロース合成に働く複数の遺伝子の発現量が低下し、そして細胞内のスクロース含量が低下していた。orrA遺伝子の改変株を作製することで、炭素の流れをよりグリコーゲンや脂肪酸合成に回すことができると期待できる。また、スクロースもバイオ燃料の原料として利用できる物質であり、今回の発見によりアナベナによるスクロース生産系の構築の可能性が見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度においては、新たにスクロース合成系を制御する転写因子OrrAを同定することに成功した。スクロースはアナベナ細胞内に大量に蓄積される物質であり、生産を目指すグリコーゲンや脂肪酸と炭素骨格を奪い合っている。そのため、細胞内のスクロース含量を低下させることは、グリコーゲンや脂肪酸の生産量の増加につながると期待できる。今年度はorrA遺伝子破壊株を作製し、そのスクロース蓄積量が減少していることを確認した。したがって、orrA遺伝子破壊株はグリコーゲンや脂肪酸生産株のベースとなる株として、今後の研究の発展に大いに寄与すると期待している。以上のように、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初計画通り、オミクス統合解析を進める。解糖系を制御する転写因子NrrAとSigE、さらにスクロース合成系を制御する転写因子OrrAを遺伝子操作した株を用いて、トランスクリプトームとメタボローム解析を行い、代謝系の変化を詳細に解析する。その結果をもとに、バイオマス生産の効率化につながるさらなる代謝改変のターゲットを見つけ出す。現在のところ、重要な糖代謝系の一つであるペントースリン酸経路を制御する因子が同定できていない。今後はペントースリン酸経路の制御因子の探索にも取り組み、包括的な糖代謝制御技術の開発を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は研究が当初計画通りに順調に進展した。DNAマイクロアレイの結果を利用した共発現解析により、スクロース合成系の遺伝子を制御する転写因子を同定することに成功した。予算には、共発現解析により転写因子の同定ができなかったときのために、DNAアフィニティーカラムによる転写因子の精製と同定の費用を計上していた。そのため、次年度繰越金が生じた。次年度はまだ同定できていないペントースリン酸経路の制御因子の探索を行う予定である。その同定には、DNAアフィニティーカラムによる転写因子の精製と同定が必要となる。オミクス統合解析と同時に研究を進めるため、繰越金は来年度予算と合わせて使用する。
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Research Products
(12 results)