2011 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ福祉政策における芸術文化の活用:分権システムと民間NPO
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23610002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渋谷 博史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (00226193)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アメリカ / 芸術文化 / 社会福祉 / 就労支援 / NPO / コミュニティ / 福祉国家 |
Research Abstract |
近年のアメリカ福祉国家の最大の特徴は、就労支援型への社会福祉への転換、再編である。本研究は、その就労支援型の福祉を典型的に示す事例として、大都市部における芸術文化支援策の就労支援型福祉への活用を取り上げる。それは、同時に、大都市の貧困地域の解決策という意味の都市再生策であり、また、貧困地域における青少年育成策として芸術文化教育プログラムでもある。その芸術文化支援策の政策手段としては、第1にさまざまな租税優遇措置や連邦政府及び州・地方政府の補助金がある。平成23年度は、カリフォルニア大学バークレー校を拠点として、サンフランシスコ市政府や地域NPOの調査と資料収集を実施した。特に、サンフランシスコ市政府によるホテル特別課税と、それを財源とする芸術文化支援の補助金の関連が興味深い。アメリカ経済社会では当たり前のフィランソロピーの精神と仕組みが前提とされる芸術文化支援システムがあり、それに対して政府部門は促進的な役割にとどまり、民間部門の主体性と主導性を阻害しないという位置取りである。同時に、就労支援的な性格を有するプログラム、プロジェクトであったとしても、それは、上記のごとく、地域コミュニティや人種コミュニティの統合策という側面があるように推察される。すなわち、福祉だけを目的とせず、就労や経済再生も含めた社会政策として認識、検討するスタンスを獲得できた。また教会等による宗教的な色彩を帯びる福祉活動と芸術文化活動の有用性も再確認できたので、平成24年度の調査活動に生かしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
カリフォルニア大学バークレー校を拠点とし、とりわけ、社会福祉大学院と行政関係の研究組織の協力をえたことで、上記の行政関係及び民間NPOの実務者への調査の準備が効率的に行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度分の「次年度使用額」は生じたのは、資料購入を予定したものの一部が無償になったためである。それも合わせて、平成24年度には、積極的な資料収集と現地調査(カリフォルニア州及びニューヨーク州)を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度も、日本国内のアメリカ福祉国家関連の研究者からの情報提供を受けながら、積極的にアメリカのニューヨークやサンフランシスコにおける芸術文化支援策と、就労支援型の社会福祉の連携の仕組み、プロジェクトの調査を実施する。平成23年度及び24年度における研究の中間的な成果を学術論文として、査読雑誌に発表する。
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