2012 Fiscal Year Research-status Report
在宅介護者のワーク・ライフ・バランスと地域での共生に関する実証的研究
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23610003
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
江川 緑 東京工業大学, 大学マネジメントセンター, 准教授 (40251615)
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Keywords | 在宅介護者 / 離転職 / 共生 |
Research Abstract |
在宅介護による離転職と介護者の地域での共生を可能とする支援の実態を中心に調査を展開した。 在宅介護者の離転職に関しては、就業形態や職種、とりわけ、自営業・在宅ワーク・専門職・裁量労働制などの従事者が就業継続しやすい傾向が認められたが、自営業でもその規模により違いがあること、企業の取り組みでも、介護休暇や狭義でのWLB施策以外の取り組みも関与していることなどが明らかとなった。さらに、介護者・要介護者の人生観・仕事観も大きく関わっていることが文献研究からも改めて示唆され、介護者の多様性を尊重した仕組みの重要性が確認された。 地域での支援に関しては、前年度調査対象とした組織ではメンバーの多くが女性であったが、在宅介護者の約3割が男性であることから、本年度は新たに男性介護者が立ち上げた組織を対象として発掘し、参与観察と聴き取りを実施した。女性介護者が多い組織同様に、少なからぬメンバーが介護終了者となっていたにもかかわらず、参加を継続していることが判明した。こうした実態は、介護を終えた中高年者の地域での居場所のなさを示すと共に、現在まさに介護中の在宅介護者に十分な支援が行き届いていない可能性も示唆していた。そこで、実際に活き活きと地域で生活する中高年者を対象にその社会関係を検討し、どのような社会的仕組みが魅力ある支援となりうるのか検討し、新たな仕組み作りに向けた示唆を得ることができた。 なお、障害や異文化背景を持つ人びとが介護者となった場合には、長年培われた生活文化が介護者・要介護者の意識に複雑に埋め込まれており、支援を利用することへの抵抗が少なくない実態も明らかとなった。 本年度は、以上の成果の一部を学会発表するとともに論文にとりまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全般としては、在宅介護者およびインフォーマル組織メンバーへの聴き取りと参与観察は、当初予定以外の組織の協力も得られ順調に進んでいる。一方、聴覚障害を専門とする連携研究者の調査では、ろうあヘルパーを対象とした調査は終えているものの、聴覚障害をかかえながら介護する当事者自体の数が少ないためデータが限られており、対象を他の障害に広げた補充調査を予定しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
障害者在宅介護者を中心に補充調査を実施した上で、最終年度であるため、これまでの調査結果とあわせてとりまとめ、在宅介護者の離転職の実態とその関連要因を整理する。ついで、在宅介護者が必要とする、企業、行政、地域、インフォーマル支援のあり方とその補完性について包括的に分析し、在宅介護者が地域で安心して暮らすことが出来る持続可能な仕組みについて検討しその成果を公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
在宅介護者の離転職の実態とその関連要因、および持続可能な効果的支援のあり方について、包括的に分析し3年間のとりまとめを行いその成果を公表する。 障害をかかえた介護者の調査では、聴覚障害者を対象予定で手話通訳のための謝金を確保していたが、調査対象者のプライバシーなどの問題から制度的な手話通訳者の利用が好まれず、またろう者で在宅介護をになう人びとの数が限定的であるなどの制約が生じたため、対象を他の障害にも広げ、予定していた手話通訳謝金をこれら多様な障害者を対象としたインタビュー・テープおこしの費用として使用予定である。
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