2013 Fiscal Year Research-status Report
在宅介護者のワーク・ライフ・バランスと地域での共生に関する実証的研究
Project/Area Number |
23610003
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
江川 緑 東京工業大学, 大学マネジメントセンター, 准教授 (40251615)
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Keywords | 共生 / 地域 / 包摂 / 在宅介護者 |
Research Abstract |
在宅介護者を対象とした地域での支援に関する調査を継続実施した。介護が長期化するにつれ、要介護者の抱える不確定要素から予定が立てにくく、在宅介護者の生活は介護中心に組み立てられるようになり、職場、近隣での人間関係や交友関係が次第に希薄化する傾向が認められた。こうした在宅介護者が抱える慢性的ストレスや孤立化を予防するため、介護などの困難を抱えながらも地域との関わりを保ち、ストレス解消をはかれる場作りが重要であると考えられた。一方、中高年者が社会参加しやすい要因に検討を加えたところ、自由な出入りと匿名性が関連していることが示唆された。介護者・高齢者のための活動は、開催日時やメンバーの固定化などから在宅介護者にとって一概に参加しやすいものではなく、今後こうした要因に配慮するとともに、誰でもが思い立った時に自由に参加・退出できる気楽な場を、地域に設けることの重要性が示唆された。先行研究でも、活動内容に比べ、参加促進要因の検討は限られている。本研究で、在宅介護者の社会参加促進要因への示唆が得られた意義は大きいといえよう。 マイノリティの立場にある介護者に関しては、その文化的特性に配慮した支援が開始される一方で、当事者に一般の人々を対象とした支援を利用したいという希望があることも示唆されている。今回の結果は、文化的配慮は有効な必要最小限にとどめ、一般の人々が利用する支援に無理なく包摂可能な支援の必要性を示唆しており、支援の在り方を見直す上で重要な視点が確認された。同様に、高齢者も高齢者だけを集めた支援活動に否定的なこともあり、多様な対象が包摂されるすそ野の広い新たな支援と従来型の対象特性に配慮した支援を混在させ、希望に応じて当事者自らが組み合わせや選択が出来る体制の確立が重要であると考えられた。 以上の結果の一部を論文に取りまとめるとともに学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる対象は一般の在宅介護者であるが、マイノリティ調査も含まれている。一般の在宅介護者に関しては、多様な人々の参加を促進しやすいすそ野の広い支援の在り方に関する調査が予定以上に順調に進められている。 マイノリティ調査は、長年聴覚障がい者の研究に携わってきた連携研究者が得られ開始されたが、キーパーソンである障がい者の急に退職に直面し、範囲を広げて検討したものの適切な研究対象を得ることが困難となった。一方、当初予定がなかったマイノリティとして中国帰国者の調査対象者が初年度に得られ、エスニックマイノリティを対象とした調査を展開するという予想を超えた進捗がえられた。そこで、マイノリティ調査に関しては、聴覚障がい者の可能性を残しながらもその代替として中国帰国者調査をさらに充実させ、その他の在日外国人に関する情報も収集できた。以上から、全体としておおむね順調に推移しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
在宅介護者の地域での共生促進に向けた持続可能な取り組みを検討するため、対象者に固有な特性に配慮した支援と多様な人々が参加しやすいすそ野の広いインフォーマルな取り組み双方についてにさらにデータを収集し、支援の方向性について取りまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マイノリティ調査として当初聴覚障がい者を対象とし、長年専門的立場から取り組んできた連携研究者がえられ、調査を開始した。その後キーパーソンの障がい者の急に退職に直面、範囲を広げて調査対象者の情報収集に最後まで努めたが、調査の本格実施が困難となった。 当初予定にはなかったものの、同じくマイノリティである中国帰国者を対象とした聴き取り調査が実施できているため、これを発展させマイノリティ調査は対象を在日エスニックマイノリティに計画変更し、併せて多様な立場の人々を包摂可能なすそ野の広い地域支援を検討するため、前年度その可能性が示唆された伝統的インフォーマル公共空間でのフィールドワークを複数地に広げ実施しとりまとめることとし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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