2014 Fiscal Year Annual Research Report
在宅介護者のワーク・ライフ・バランスと地域での共生に関する実証的研究
Project/Area Number |
23610003
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
江川 緑 東京工業大学, 大学マネジメントセンター, 准教授 (40251615)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 在宅介護者 / 介護ストレス / 社会参加 / 共生 / インフォーマル相互扶助 / 多様性 / 包摂 / 離転職 |
Outline of Annual Research Achievements |
在宅介護者のワーク・ライフ・バランスと地域での共生に関する調査を継続実施した。とりわけ本年度は、日本人に加えて在日エスニックマイノリティの対象を拡大するとともに、介護者誰でもが参加しやすい地域のインフォーマルなコミュニティ活動にさらなる検討を加えた。 介護者がエスニックマイノリティの場合、要介護者の居住地および在日期間が介護者の対処に大きく関連していることが示唆された。対象を広げたことにより、在日期間により文化的バリアが異なる点に十分配慮した支援体制の重要性が確認できた。 これまで実施した調査から、在宅介護者は仕事や家事の負担に加え、要介護者の状態が予測困難であるため予定が立てにくく、社会参加しづらい、孤立しやすいなどの問題が認められた。その一方で、慢性的介護ストレスから一時的にでもリフレッシュをはかるための参加しやすい活動が、非常に限られていることも明らかとなった。そこで、高齢者をはじめとした多様な人々の参加で賑わう地域のインフォーマル活動の参与観察を継続的に実施した。その結果、多様な選択肢があり、属性や時間に縛られることなく参加でき、出入りも自由な屋外で開催される活動が、身近な地域にあることの重要性が示唆された。 本研究では、ケースによっては数年にわたる調査が可能となり、質的データを積み重ねたことによる新たな知見も見出された。介護者の自宅に、ケースによっては介護者が不在時に、複数の介護関係者が出入りすることへの抵抗感が少なくなく、介護保険の申請そのものや在宅支援サービスの利用をさしひかえるもしくは強いストレスを抱きながら利用する在宅介護者の存在である。行政には届きにくい介護者の声ではあるが、こうした人々の存在を認識し包摂してこそ在宅介護は意味をなすものと考えられる。インフォーマルな相互扶助システムの構築およびその行政との協働も有効な対応策の一つと考えられた。
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