2011 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける「排除された人々」に対するASSと開業看護師の連携の可能性
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23610007
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Research Institution | Yamagata Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
菅原 京子 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (40272851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 真 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (30451503)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 共生・排除 / 地域看護学 / 医事法 / 医療・福祉連携 / 医療・福祉専門職 / フランス |
Research Abstract |
1.本研究の目的: フランスにおける排除された人々(Exclus)に対する医療と福祉の連携について、連携の鍵となるアクターであるassistante de service social(ASS)と開業看護師を主点に置き、法制度と活動の両面から体系的に検討する。2.平成23年度の研究活動: (1)フランス調査:研究代表者らの先行研究等でASSの制度・活動の概要はすでに把握しているため、今回はフランス在宅ケアに携わる(開業)看護師の調査に主点を置いた。5日間の調査では、研究代表者である菅原京子と研究分担者の菅原真准教授(名古屋市立大学)で、パリのフランス看護師会、HAD在宅入院協会、開業看護師オフィス、コロンブ市CLIC(60歳以上の人々に対し福祉サービスの情報提供・調整を行う機関)を視察した。視察調整・通訳として日本医師会総合政策研究機構フランス駐在研究員の奥田七峰子氏の助力を得た。本調査により、看護教育の大学化(3年間)等のフランス看護制度の最新情報、デクレ(政令)における看護調整、在宅ケアにおけるHAD・開業看護師・CLICの位置づけと連携状況を把握した。先行研究でフランスの医療と福祉のサービス重複の課題が判明しているが、今回の調査によりアクター連携は図られている状況が確認できた。一方、連携における日仏の専門職のメンタリティの異同も感じ、本研究推進のために日本の連携に関する基礎研究も必要と考えられた。(2)国内のフランス医療・福祉の研究者との意見交換:青森県立保健大学の出雲祐二教授から、現代フランスのExclusion観念の展開と貧困・低所得者対策の具体的制度について専門的知識を提供していただいた。また、連携研究者である加藤智章教授(北海道大学)と意見交換し、本研究のフィールド調査のターゲットとするExclusを日仏の医療福祉状況から独居高齢者に置くこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.平成23年度の研究実施計画に基づいて、フランス視察及び国内のフランス医療・福祉の研究者との意見交換を実施した。その結果、先行研究では十分に明らかにされてはいないフランスのアクター連携の状況の新しい知見を得ることができた。しかし、現地資料の翻訳作業の遅れもあり、本研究に関連した法制度を正確に把握するまでには至っておらず、さらなる研究活動が必要である。2.フランス視察の成果をベースとして、フランスの排除された人々に対するASSと開業看護師の連携に関するフィールド調査の具体的項目策定に着手しはじめている。一方、同項目は日本の在宅ケアの連携に関する先行研究も参照する予定であった。しかし、先行研究だけでは連携の意識に関する調査項目までは策定できないことが判明した。今後、本研究の関連研究として日本における専門職間連携の研究を行う必要がある。3.研究成果公開が研究代表者の簡略なwebページに止まっている。上記した新しい知見のまとめが早急に必要であり、学会発表・論文投稿、市民公開講座等の研究成果公開を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
1.現地資料の翻訳作業を進めて本研究に関連した法制度の全体像を俯瞰した上で、フランスの排除された人々(主点は独居高齢者)に対するASSと開業看護師の連携に関するフィールド調査を行い、フランスの医療・福祉のアクター連携の特徴を探究する。フィールドは研究代表者らの先行研究において対象としたリヨン郊外のヴィユールバンヌ市とする。視察先はヴィユールバンヌ市社会福祉活動センター(CCAS)、ヴィユールバンヌ老人退職者事務所にあるCLIC、開業看護師オフィス等を予定している。2.日本における専門職間連携について研究協力者とともに関連研究を実施する。予定テーマは「日本における保健医療・福祉連携の専門職間の相互作用-独居高齢者支援に主点を置いて」とする。同関連研究の成果は、フランスのフィールド調査の項目策定に生かし、フランスの専門職連携の特徴を明確にすることにつなげる。3.学会・論文投稿及び市民公開講座等による研究成果の公開を推進する。4.研究代表者:菅原京子(地域看護学)、研究分担者:菅原真(名古屋市立大学・仏憲法)、連携研究者:加藤智章(北海道大学・日仏社会保障法)の体制は平成23年度と同様とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.次年度使用予定研究費は、(1)フランス調査に同行予定であった研究協力者が日程調整の関係で同行できなくなったこと、(2)フランス現地資料の翻訳の業務委託の手続きが遅れたこと、(3)研究成果公開に伴う費用を使用しなかったこと、により生じたものである。2. 次年度については下記の項目で研究費を使用し、研究の推進を図る。(1)フランス現地資料翻訳の謝金・業務委託料、(2)フランスのフィールド調査に伴う旅費・謝金・関連書籍等の物品購入費用・通訳業務委託料、(3)日本の専門職間連携研究に伴う旅費・謝金・関連書籍等の物品購入費用、(4)国内のフランス医療・福祉の研究者との意見交換に伴う旅費、(5)研究班の研究会議開催に伴う旅費、(6)研究成果公開のための学会参加費・旅費・印刷費。
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Research Products
(1 results)