2012 Fiscal Year Research-status Report
フランスにおける「排除された人々」に対するASSと開業看護師の連携の可能性
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23610007
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Research Institution | Yamagata Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
菅原 京子 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (40272851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 真 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 准教授 (30451503)
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Keywords | 共生・排除 / 地域看護学 / 医事法 / 医療・福祉連携 / 医療・福祉専門職 / フランス |
Research Abstract |
1.本研究の目的:フランスにおける排除された人々(Exclus)に対する医療・福祉連携について、連携の鍵となるアクターであるassistante de service social(ASS)と開業看護師を主点に置き、法制度と活動の両面から体系的に検討する。 2.平成24年度の研究活動: (1)フランス調査(パリおよび近郊市5日間):日仏の医療福祉状況からフィールド調査の的とするExclusを独居高齢者に置いた。平成24年度は高齢者支援のアクター連携の実際と連携教育についてASSを主点に調査した。研究代表者である菅原京子と研究分担者の菅原真准教授(名古屋市立大学)で、ブローニュ=ビランクール市のCCAS(日本の社会福祉事務所の近似機関)とCLIC(60歳以上の人々に対し福祉サービスの情報提供・調整を行う機関)、コロンブ市CLIC、移民支援NPO であるGISTI事務所、ラブレー社会福祉職/医療職専門大学校、全国アシスタント・ソシアル協会役員(ラブレー社会福祉短期大学校名誉教授)の自宅、を訪問した。研究協力として国際協力機構JICA研修監理員の末次圭介氏、視察調整・通訳として日本医師会総合政策研究機構フランス駐在研究員の奥田七峰子氏の助力を得た。今回の調査で、フランスにおいて地域のニーズに対応した柔軟な医療・福祉連携が図られていることを確認した。また、ASS教育のカリキュラム全体像における連携教育の状況を把握した。 (2)平成23年度の調査で連携における日仏の専門職のメンタリティの異同を感じたため、フランス調査の基礎研究の位置づけとして日本の独居高齢者の医療・福祉連携に関する研究を開始した。平成24年度は研究代表者所属大学の倫理委員会の承認を受ける段階まで進んだ。また、研究手法として用いる修正版グラウンデットセオリーについて、専門家である山崎浩司准教授(信州大学)の指導を受けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.平成23・24年度の計10日間のフランス調査により、先行研究では十分に明らかにされていなかったアクター連携の新しい知見、すなわち「フランスの高齢者医療・福祉のアクター連携が進展していること」「地域のニーズに対応した柔軟な連携が図られていること」を確認できた。また、CLIC等、本邦に十分に紹介されていないフランスの高齢者支援機関の状況について把握することができた。他方、フランスの制度は複雑であるため、今後、連携研究者等の専門家の助力を得ながら、正確を期することが重要である。 2.上記のフランス調査における収集資料によって、ASSと開業看護師の法制度の基盤にあるフランスの社会福祉職と看護師の資格・教育制度の全体像を把握しつつある。とくに本邦で十分に紹介されていないEUのボローニャ宣言によるフランスの医療・福祉専門職の「大学教育化」の具体的状況を把握できたことは、貴重な研究成果につながるものといえる。 3.フランス調査の基礎研究の位置づけとして、平成24年度から日本の独居高齢者の医療・福祉連携に関する研究を開始できた。本格的な調査はこれからであるが、研究代表者所属の大学教員3名から協力を得る体制を構築した。 4.研究成果公開について、第71回日本公衆衛生学会総会・第15回北日本看護学会学術集会での発表、看護系大学教員のFD研修会における発表、研究代表者所属の大学における市民向け公開講座での発表、と多角的に発表することができた。一方、Web更新は十分とはいえず、今後、タイムリーな更新が必要である。また、フランス資料の翻訳作業の遅れから専門学会誌への論文投稿などに至っておらず、今後の努力を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成25年度は研究の最終年度のため、研究目的の達成に向け以下について実施する。 2.今までのフランス調査で把握しきれていない看護師の教育制度について、パリのラブレー社会福祉職/医療職専門大学校を再訪問し確認する。また、パリおよび近郊市の調査で明らかになったフランスの「高齢者医療・福祉のアクター連携の進展」や「地域のニーズに対応した柔軟な連携」が他地域においても同様であるかについて調査する。視察先は、研究代表者の先行研究のフィールドであったリヨン郊外のヴィユールバンヌ市のCCAS、CLIC、開業看護師オフィスを予定している。 3.平成24年度から開始した日本の独居高齢者の医療・福祉連携に関する研究を進める。とくに、今まで感覚的に把握している日仏の専門職のメンタリティの異同を確認するインタビューガイドの鍵を見出し、上述したフランスのフィールド調査に活用する。 4.研究成果の公開について専門学会誌への論文投稿を行う。また、Webを活用した研究報告の充実を推進する。研究成果全体については、近い将来の出版を目指したまとめを行う。 5.研究代表者:菅原京子(地域看護学)、研究分担者:菅原真(名古屋市立大学・仏憲法)、連携研究者:加藤智章(北海道大学・日仏社会保障法)の体制は、平成23・24年度と同様とする。また、フランスの制度・調査の研究協力として、出雲祐二教授(青森県立保健大学・仏社会福祉)、柴田洋二郎准教授(中京大学・仏社会保障)、末次圭介氏(国際協力機構JICA研修監理員・翻訳/通訳)の助力を得る。日本の独居高齢者の医療・福祉連携の研究については、研究代表者所属大学の看護学科の高橋直美助教、山田香助教、今野浩之助教の助力を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度である平成25年度は下記の項目で研究費を使用し、最終年度としての研究の推進を図る。 (1) フランス現地資料翻訳の謝金・業務委託料、(2) フランスのフィールド調査に伴う旅費・謝金・関連書籍等購入費用・通訳業務委託料、(3) 日本の専門職間連携研究に伴う旅費・謝金・関連書籍等購入費用、(4)国内のフランス医療・福祉の研究者との意見交換に伴う旅費、(5)研究班会議開催に伴う旅費、(6)研究成果公開のための学会参加費・旅費・印刷費。
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Research Products
(5 results)