2014 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカにおける高齢者の貧困の実態とブッシュ・オバマ政権の年金政策の比較研究
Project/Area Number |
23610010
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
吉田 健三 松山大学, 経済学部, 教授 (80368844)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | アメリカ / 年金システム / 高齢者の貧困 / 企業年金 / 社会保障年金 / 401(k)プラン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、アメリカにおける高齢者世帯の貧困問題の実態、それに対する近年の政策的対応の内容、成果、限界、またそれらを決定づけている社会的諸条件を明らかにすることにあった。研究に先立ち、念頭にあった問題意識は、高齢者世帯の貧困率が先進国で最も高いアメリカにおいて、公的年金を補完する私的なシステムへの国民の「包摂」が重要な政策課題として位置づけられているにも関わらず、またブッシュ政権とオバマ政権は対照的な党派性や政策理念にも関わらず、年金政策において類似の志向と限界を共有していたことである。本研究は、この政策の「硬直性」の要因をアメリカの社会構造に求め、今日のアメリカ高齢者問題の要因と今日の年金政策が直面している現実的な諸制約を具体的に示すという意図をもとに出発した。 本研究における最大の成果は、研究期間中に上梓した『アメリカの年金システム』である。この研究は、アメリカの年金システムの形成史を、自由と自助という同国の伝統的な原則の展開過程として捉え、そこで培われたアメリカ的な基礎的保障の論理、および企業年金における受給権保護の論理の具体的な内容とその歴史的帰結について論じた。上記の課題への回答として本書は、アメリカの年金政策の「硬直性」の背景には、20世紀を通じて貫かれてきた年金政策におけるアメリカ的伝統があり、それは共和党と民主党といった党派を超えて共有されていること。今日における高齢者の貧困問題への対応についても、このような論理の延長線上で議論が展開されており、このことが年金政策の大きな制約となっている。一方で、この「硬直性」は、社会保障年金の長期的「安定性」、および企業年金をめぐり提案、実施されている様々な先進的な取り組みをもたらしていることも示唆された。これらを最新の事情を踏まえて、オバマ政権期における年金政策およびその成果の分析を行うことが今後の課題である。
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Research Products
(1 results)