2013 Fiscal Year Annual Research Report
芸術活動を続けている精神疾患当時者の作品の分析に基づく啓発資材の開発に関する研究
Project/Area Number |
23610011
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Research Institution | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
Principal Investigator |
竹島 正 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所精神保健計画研究部, 部長 (20300957)
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Keywords | 芸術諸学 / 医療・福祉 / 精神疾患経験者 / 美術活動 / メンタルヘルスプロモーション |
Research Abstract |
本研究では、芸術活動を生きがいとしている精神疾患当事者の制作した芸術作品を、精神保健および美術の観点から総合的に評価し、それらをもとにした共生社会の実現に向けての啓発教育の資材を開発することを目的とした。平成23年度には、芸術活動を続けている精神疾患当事者への面接調査を実施した。平成24 年度には、作者本人、精神保健専門家、美術専門家等による意見交換を行い、啓発教育用の啓発資材案を作成する準備を行った。 25年度研究では、これらの成果を踏まえ、啓発資材案を冊子「やさしさのなかの、たくましい生き方-芸術活動を続けている精神疾患当事者から学ぶこと-」として印刷製本し、これを使用した啓発教育を2つの大学の学生を対象に試行し、参加者への質問票調査をもとに啓発資材案の評価を行った。2つの大学の看護学・社会福祉学を専攻する学生129名を対象に、啓発資材案を用い、グループディスカッションを含めた啓発教育の講義を行うとともに、講義前後で質問票調査を実施した。SD法を用いた質問票への回答を分析した結果、啓発資材案を用いた講義の前後で、学生の精神に障害を持つ人に対するイメージはよりポジティブなものへと変容したことが示唆された。また、性、専攻分野、および精神疾患当事者と関わった経験の有無にかかわらず、講義後には学生の精神疾患当事者に対するイメージはよりポジティブなものへと変化したことがうかがわれた。 以上の結果は、本研究において作成された啓発教育用の啓発資材は、学生を含めた一般市民における精神疾患当事者に対する理解・共感を高め、精神疾患についての正しい理解を促し、ひいては共生社会の実現に寄与しうることが示唆された。今後、調査対象をさらに広げた評価研究を実施し、本研究で作成された啓発資材の有用性の検証、ならびに資材の普及につなげていくことが望まれる。
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