2012 Fiscal Year Research-status Report
平面図形のシュパヌンクに関する基礎研究―視覚効果の定量的評価
Project/Area Number |
23611017
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
木下 武志 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (90244772)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長 篤志 山口大学, 理工学研究科, 准教授 (90294652)
松田 憲 山口大学, 理工学研究科, 講師 (10422916)
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Keywords | デザイン学 / 視覚心理 / 心理実験 / 視覚デザイン / 感性工学 / 幾何学的形態 / 幾何学的錯視 / 空間力 |
Research Abstract |
「シュパヌンク」は日本では「空間勢力」や「空間力」などと定義され、図形内部や図形外部、図形と図形の間の空間に作用し、視野内で物理的に配置した位置から移動して見える錯視(距離や間隔が正しい位置に視認できない。)や見る側に緊張感を与えると言われている。この視覚的な影響を調整するには、この「シュパヌンク」の空間の場への影響・効果(方向や強さ)について明らかにすることが重要であるが、従来から画家やデザイナーらの経験則で捉えられて感覚的に処理されてきており、国内や海外においても科学的に明らかにされていない。 当該研究は、構成要素の平面的な配置を調整するための「シュパヌンク」の定量的な感性情報の基礎データを得ることを目的とする。具体的には、平面の基本的な幾何学的形態を刺激とした心理実験を行い、その結果と分析、考察から定量的評価を行う。 平成24年度の研究成果としては、主に2つの実験をおこなった。1つは、液晶ディスプレイに表示した平面図形のプロポーション、配置の角度を段階的に変化させ、更に明度を8段階変化させた実験刺激を対象とした(全ての明度をディスプレイ測色計で測色した)。制作した図形は黄金三角形、直角三角形、√2矩形、黄金矩形、√4矩形、正六角形、滴形の7種類で、基準刺激と比較刺激を制作し、調整法を用いて心理実験を行なった。結果として、配置角度と明度が関連することが明らかとなった。もう一つは、図形外部の「シュパヌンク」の空間への影響・効果(方向や強さ)について明らかにすること目的として、液晶ディスプレイに表示した2つの基本的な幾何学的形態のプロポーション、配置位置の間隔を段階的に変化させ、更に4つの配置位置を用いた実験刺激を対象とした。刺激の色はディスプレイ測色計で測色した中灰色とした。結果として、距離と形態的特徴と三角形の頂点の内角の角度による影響が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に実施する予定であった、平成23年度までの図形の種類やプロポーション、配置の角度を段階的に変化させた刺激に、明度と色相を変化を加えた。これを調整法を用いて心理実験を行った。また、図形外部の「シュパヌンク」の視覚的影響を調べるための2個の図形を並置したを実験刺激として制作した。これをディスプレイに表示し、マグニチュード測定法を用いて心理実験を行ない結果の分析及び検討を行った。各刺激図形をディスプレイ測色計で測色した。また、「シュパヌンク」について、文献資料の調査と収集、美術大学等の専門教育機関を訪問し、専門家との意見交換を行うことができた。当該研究と関連した成果を芸術工学会、日本感性工学会の大会で発表を行った。昨年度投稿した芸術工学会と日本感性工学会へ投稿論文が採択された。更に、平成25年度に当該研究の成果を国際会議での発表や論文投稿の予定があり、日本デザイン学会で発表予定もあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は平成24年度から引き続き,図形の外部と図形と図形の間の空間に作用する視覚的影響、刺激の色による視覚的影響を調べる。図形の外部の影響については、これを実験参加者が視覚的に操作して調べることのできる実験刺激を考案する。 図形と図形の空間については、刺激図形を液晶ディスプレイに配置し、角度(方向)、配置位置を変化させた刺激を制作する。そして、心理実験とその結果の分析を行い、考察及び議論を行う。加えて、「シュパヌンク」について、文献資料の調査と収集、美術大学等の専門教育機関を訪問し、専門家との意見交換を行い、「シュパヌンク」の概念設定について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、次の理由で次年度使用額が生じた。1)研究は順調に進んだが、平成23年度に生じた次年度使用額が多かったため。2)予定よりも、実験刺激の制作や実験実施に要する時間が少なく済んだため、謝金の額が少なかった。 平成25年度は、次の内容に研究費を使用する。1)研究成果を国内の学会大会や国際会議で発表する。2)研究成果を学会誌に投稿する。3)実験刺激の制作や実験実施の謝金として使用する。4)国内の専門家の研究機関を訪問し、研究打ち合わせを行う。5)文具やPC関連の消耗品を購入する。
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