2011 Fiscal Year Research-status Report
『汎美計画』から芸術工学へ、デザインイデオローグとしての小池新二研究
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23611022
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤原 惠洋 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (50209079)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 フィンランド / 国際情報交流 スエーデン / 国際情報交流 ノルウェー / 国際情報交流 デンマーク / 国際情報交流 オランダ / 国際情報交流 ドイツ / 国際情報交流 イギリス / 国際情報交流 アメリカ |
Research Abstract |
昨年度、国内調査は3つのレベルに分けて実施している。(1)千葉大学附属図書館に所蔵されている小池文庫の史料・図書の書誌学的分析を実施。(2)本学(九州大学大学院芸術工学研究院)所蔵の小池資料の書誌学的分析を実施。(3)元神戸芸術工学大学教授森下明彦氏を初めとする関係者所蔵の所蔵文献の書誌学的分析及び関係者への聞き取り調査 以上の文献・史料調査の実証化作業を通し、書誌学的データーベース化のプラットフォーム構築を行っている。このために必要な機材を選択、購入したうえで情報整理と分析作業の手法開拓を実施してきた。こうしたデーターに立脚しながら同時に研究対象としている小池新二における戦前期デザイン観の批判的検証を展開している。 さらに戦前期の小池を影響づけた海外デザイン書誌の情報出自を明らかにするため、国外調査を2度実施した。前半は2011年12月~1月北欧4ヶ国およびオランダにおいて主要関連施設Finnish Design Cnetre、Svensk Form、Norsk Design Centrrum、Liden Universty文学部等を訪問調査した。続く2012年3月にはアメリカにおいてColombia University Avery Library、Harverd University Graduate cshool of Design Frances Loeb Library、Washington Library of Congress等を訪問調査した。こうした施設・図書館では小池が1931年樹立「海外中央文化局」に世界各国から収集したデザイン専門誌に注目、発行事情や情報伝播影響力を現地出版事情と照らし合わせながら検討している。さらにカナダ・トロントで開催された国際アジア学会に出席、Jordan Sandジョージタウン大学教授等と本テーマにおける研究交流を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を創出したことが機縁で国内調査を通し元神戸芸術工科大学森下明彦氏との研究交流から得られた知見は少なくない。同時に先行研究の収集と批判的検証作業から得られた研究全体の構図が把握されつつあり、研究の目的として設定した内容を越えて全体像のイメージが把握できつつある。 一方、国内調査の主軸として期待していた千葉大学附属図書館所蔵の小池文庫の保管状況に著しい変化が生じていた。同図書館はさる3月半ば、耐震補強化のため新館建設を遂げており、一時的に所蔵図書の配置変更や閲覧停止を実施中であるため、当該小池文庫のうち2割程度の書籍が現在利用不可能となっている。これらは本研究を構想した当初には予測できなかった事態であり、現在限定的に閲覧可能な書籍を中心に書誌学的分析の対象とせざるをえない状況となっている。 また昨年度2回にわたって実施した国外調査における現地訪問や研究者との交流は実証的な論考を進める上で欠かせない成果をもたらしたと自己評価するものの、訪問先の主要デザインセンター、美術館、資料館、モダンデザイン啓発関連機関への研究協力依頼や実際の現地訪問時における受入れ体制はけっして万全のものとは言えず、これらを基礎調査と位置づけ直したうえで、今後の積極的な研究交流依頼や調査研究に関する情報連絡ネットワークの再構築や基礎資料の事前提示などの課題を継続して展開する必要がある。また日程的な事情により、昨年度はドイツ調査を急ぎたかったが果たせず、急遽アメリカ合衆国調査へ変更せざるをえなかった。しかし運良く国際アジア学会への出席を果たすことができ、この場における研究者交流を活用して当該研究への研究交流を呼びかけることができたのは幸運であった。
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Strategy for Future Research Activity |
国内調査では小池新二の言説及び活動に関する聞き取り調査を展開するためインフォーマントの広範な設定を行う。九州大学大学院芸術工学研究院(旧九州芸術工科大学)同窓会組織「渾沌会」への調査研究要請を開始しており、幅広い観点からの小池論が期待できる。同時に日本デザイン学会、日本建築学会、意匠学会、文化経済学会<日本>、日本文化人類学会等のアカデミーを通した先行研究の探索と研究交流ネットワークの構築を行っていく。すでに千葉大学孫大雄氏による先行研究を始め重要な知見が確認されており、今後はこうした先行研究の諸賢へ向けた聞き取り調査も開始していく。 国内調査では続行して千葉大学附属図書館所蔵の小池文庫の書誌学的分析が重要であるが、同図書館の再整理状況を鑑みながら随時主要文献の抽出を行っていかざるをえない。こうした作業を通し、昨年度を継続するかたちで戦前期デザイン観揺籃に影響を与えた書籍の分析を試みていく。 一方、戦前期の小池デザイン観を前提とした言説の集大成とも言える昭和18年刊「汎美計画」には、戦前ドイツおよびイギリスに関する事象からの影響も多彩に反映されており、急ぎ1920年代~30年代ドイツおよびイギリスデザイン書誌の情報出自を明らかにするため、現地調査を実施することとしている。対象施設としてはドイツでは、アーヘン工科大学図書館、ベルリン工科大学図書館、ドイツ国立工芸博物館、シュツットガルト工科大学図書館等、イギリスでは、RCA(王立デザイン大学)図書館、デザインセンター、大英図書館、エジンバラ大学図書館等を構想している。戦前期の発行状況と文献資料批判を通し小池の観測状況を同定していく。現地調査では交流の実績のあるデザイン史学専門家や関係組織の協力を得る予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内調査では小池新二の言説及び活動に関するインフォーマントへの聞き取り調査に対し研究補助のため同行する大学院生を用いる。さらに九州大学大学院芸術工学研究院(旧九州芸術工科大学)同窓会組織「渾沌会」への調査研究のためアンケート設計を行い、印刷・配送・返送内容の処理と分析などに研究補助の大学院生を用いる。一方、日本デザイン学会、日本建築学会、意匠学会、文化経済学会<日本>、日本文化人類学会等の先行研究の探索と研究交流ネットワークの構築に向け学会訪問や資料館踏査、先行研究の諸賢へ向けた聞き取り調査のための国内出張を数次に渡り行う。 国内調査では千葉大学附属図書館所蔵の小池文庫の書誌学的分析を継続、戦前期デザイン観揺籃に影響を与えた書籍の分析を試みる現地調査のため出張を行う。 一方、1920年代~30年代ドイツおよびイギリスデザイン書誌の情報出自を明らかにするため、両国への現地調査を実施することとしている。対象施設としてはドイツでは、アーヘン工科大学図書館、ベルリン工科大学図書館、ドイツ国立工芸博物館、シュツットガルト工科大学図書館等、イギリスでは、RCA(王立デザイン大学)図書館、デザインセンター、大英図書館、エジンバラ大学図書館等を構想している。 現地踏査に必要なデジタルメモリーカード、写真データーカード、等の補充を行う。 また分析作業やデーターベース化作業のため大学院生等の雇いあげを行う。 さらに聞き取り調査や学会先行研究調査時に資料複写、印刷等の費用が発生する。
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