2013 Fiscal Year Research-status Report
『汎美計画』から芸術工学へ、デザインイデオローグとしての小池新二研究
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23611022
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤原 惠洋 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (50209079)
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Keywords | 小池新二 / 汎美計画 / 芸術工学 / 技術の人間化 / 海外文化中央局 |
Research Abstract |
平成25年度は1943年(昭和18)発行小池新二(1901~1981)著『汎美計画』を構成した記事・文章の原著出典を千葉大学附属図書館本館(旧館)所蔵「小池文庫」の書誌学的調査に鑑みながら検討した。第二次世界大戦中における汎美概念提示といった複雑な歴史的背景ならびに数多くの資料根拠を探索・分析、とりわけ小池が私的に設立した国際情報収集機関「海外文化中央局」の意義と効果に関し検討した。併せて当時の言説の中から『汎美』概念創出の理論的根拠を検討した。 一方、本研究では『汎美計画』が1943年に顕現させた幅広い海外情報の出自検証と背後の各国デザイン事情を共時態的に比較、平成25年度は戦前期英国における建築・工芸に関する専門図書出版の概要調査を実施、併せてロンドン、グラスゴー、エジンバラ等におけるデザイン振興機関、デザイン専門学校、デザイン博物館等を通した戦前期デザイン情報の調査を実施した。 小池を初代学長に戴いた旧九州芸術工科大学OBらが出版した『Arting 福岡・芸術文化の創造と思考』No10(2013.12.24発行)は「九州芸術工科大学初代学長小池新二のロマン」を特集、筆者はこの小誌を契機とし平成26年度九州大学公開講座を企画。折り重なる小池再評価の機運は、1968年九州芸術工科大学創立時に示された「芸術工学」概念や「技術の人間化」理念をより深める必要を示す。本研究が意図してきた目的とも共振しあう。 他方、平成23・24年度と継続した千葉大学所蔵「小池文庫」の書誌学的分析調査は、同館の耐震補強と増改築工事のため小池文庫が数次に渡って移動されるという事態に阻まれた。この間、単行本を中心とする書籍の閲覧が不可能となった時期もあるため継続作業の見直しを強いられ、平成26年度へ1年間の延長を申請したところ許可された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、平成23・24年度と継続した千葉大学附属図書館本館(旧館)所蔵「小池文庫」の書誌学的分析を軸に、本研究の主軸とした1943年(昭和18)発行小池新二(1901~1981)著『汎美計画』を構成した記事・文章の原著出典と同時代における言説の評価や批判的検証を成果づけたいと平成25年度も複数回に渡る現地調査を立案したが、同館の耐震補強を契機とする増改築工事と遭遇、この間に小池文庫が数次に渡って移動されるという事態が発生。この間、単行本を中心とする書籍の閲覧が不可能となった時期もあるため継続作業の見直しを強いられ、平成26年度へ1年間の延長を申請したところ許可された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の立て直しを急ぎ、戦前期の小池が私的に設立した国際情報収集機関「海外文化中央局」の意義と効果を通し、『汎美計画』が1943年に顕現させた幅広い海外情報の出自検証と背後の各国デザイン事情を共時態的に比較、第二次世界大戦中における汎美概念提示といった複雑な歴史的背景を加え、『汎美』概念創出の理論的根拠を明らかにしていく。 さらに先行研究のレビューに加え、新たな知見を動員し戦後小池の道程を再検証、その後1968年小池を初代学長に戴いた旧九州芸術工科大学OBらへの聞き取り調査と小池の言説調査を重ね「芸術工学」概念や「技術の人間化」理念の顕著な普遍的価値を分析、戦前期『汎美計画』から「芸術工学」ならびに「技術の人間化」への発展的昇華作用を包括的に論考する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23・24年度と継続した千葉大学附属図書館本館(旧館)所蔵「小池文庫」の書誌学的分析を進めるため複数回に渡る現地調査を立案したが、同館の耐震補強を契機とする増改築工事と遭遇したため、この間に小池文庫が数次に渡って移動されるという事態が発生。この間、単行本を中心とする書籍の閲覧が不可能となった時期もあるため継続作業の見直しを強いられ、平成26年度へ1年間の延長を申請したところ許可された。 次年度予算は、主としてあらためて千葉大学附属図書館本館(旧館)所蔵「小池文庫」の書誌学的分析を進めるために使用する計画である。 さらに、これまでの成果を整理するため学生の補助作業に対する謝金を計画している。
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