Research Abstract |
共感覚を利用した脳科学実験とメディアを利用した心理実験を行い,共感覚クロスモダリティ,そのメディアへの関連を明らかにした.多くのアニメでは,クロスモーダルに“音楽―色彩”の同主調関係で“転調”関係を作っている.たとえば、千と千尋ではイ長調からイ短調への転調は,音楽理論で「追憶・ノスタルジー」を表し,主人公千尋と白龍の邂逅・過去の関係を強く示唆している.「千と千尋」では高度な感性により冒頭から本来のストーリをクロスモーダルに印象づけ,ビジュアルなストーリの導入に成功し,日本のアニメが非常に高度なクロスモダリティ技術を駆使している可能性を示している. 共感覚者の判定には,刺激へのクロスモーダル反応の一貫性を,共感覚スコアとEarth Mover Distanceを用いた回帰検定でその関係を検証.また本研究グループは日本で初めて,共感覚判定テストHPを開設し,共感覚者へ科学的診断と,共感覚者データ収集を10年近く行った.本テストを利用し,東京芸大, 日本フィルハーモニなど,芸術家を対象にした大規模な共感覚者テスト調査は数千人に一人の割合と言われている音楽⇔色彩共感覚者(色聴)100人近くから各音階・和音・調に感じる色彩データを採取し,クラスタリング処理を行った. 色聴者は音階, 和音, 調に対して, 調を中心に構造的に色彩を対応づけていることがわかり,それぞれに対して,色聴者の感じる代表色を分散検定により有意度5%で決定した. 情動・色彩に対する共感覚を脳科学的計測した例は世界的にも未だ報告されていない.この共感覚保持者に色彩・人名刺激を提示し脳磁図計測した結果,紡錘状回内の色知覚に関わるV4/V8付近で有意な活動を捉えることに成功し,さらにこの活動に同期して, 情動を制御する前頭前皮質・背外側部の活動が有意に観測されるという結果が得られており, これらは世界で初めて計測された結果で, 共感覚クロスモーダル・メカニズム解明にとって大きな成果である
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