2011 Fiscal Year Research-status Report
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23611033
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
宮田 圭介 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 教授 (40387527)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
平成23年度研究計画に基づき,通常学級に在籍する軽度発達障害児を対象として,小学校教科書で掲載される物語において,その登場人物の感情や抽象概念の理解を促すために,「あらすじの可視化」「感情の可視化」の表示デザイン検討を実施した.高機能自閉症など軽度発達障害のある多くの児童生徒にとって,教科書で扱う物語における登場人物の感情を,文章読解だけで理解することは困難である. そこで,小学5年の国語教科書に掲載される物語「あめ玉(新美南吉作)」を題材にして,必要に応じてイラストや動画などを用いて登場人物の感情を可視化して,理解を促すパソコン版デジタル絵本を試作した.同様に長文読解の場合,あらすじが記憶できないために物語が理解できない児童生徒もいる.そこで,主要な章や節を分割して,Flash動画で可視化表現するデザインの検討を行った.このデジタル絵本には3つの特徴がある.まず,読解支援のため,この絵本の初期状態では,主な章を分割した文章しか表示されていない.読解困難な文章をマウスでクリックすると,その文章表現だけがイラストで表示されて物語の状況が理解できる.特に理解が難しい文章については,動画で表示されて理解が促される.次に,登場人物に注目しやすいよう,イラスト表現において,背景の抽象化や作画の色数を減らす工夫をおこなっている.さらに,児童生徒の認知レベルに合わせて,3種類のイラストが選択できるよう配慮されている. 「ATAC2011」(2011年12月18日,京都国際会館)でのデモ展示,および「子どもの本の日フェスティバル」(2012年3月17日~18日,ゲートシティ大崎)の展示では,「発達障害児向け物語はDAISYが有名であるが,本研究は着想が異なり独自性が高い」との評価を特別支援教育関係者の方々からいただいたので,研究の意義は認められたと推察される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では小学4年教科書の物語「ごんぎつね」を題材にする予定であったが、短編物語の方が早く有効性確認ができるため、小学5年教科書の物語「あめ玉」でデジタル絵本を試作し、研究展示デモによる妥当性評価を行った。(なお、物語「ごんぎつね」は平成24年に評価実験を行う計画で科研費申請しているので、来期向けに同時制作を実施中。)
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Strategy for Future Research Activity |
通常学級に在籍する軽度発達障害児を対象として,物語「ごんぎつね」の登場人物の感情や抽象概念の理解を促すために,平成23年度実施の「あらすじの可視化」「登場人物の感情の可視化」検討に加えて,平成24年度は「抽象概念の可視化」の表示デザインのソフトウエア試作を行う.具体的には,「幸せ」や「死」などに関係する,発達障害児には理解しにくい抽象表現が文中にある場合,そのことばをクリックするとFlash動画などで可視化できるソフトウエアを試作して,理解を促進する.例えば「いたずら」という抽象語は,「いたずらする人」と「いたずらされる人」,そして「困った行為」の三点から成り立つ概念である.ここでは,概念が理解しやすくなるよう,いたずらするごんぎつねと,いたずらされる兵十,いもを堀散らかす行為の三点を動画で表現する. 次に,表示デザインの妥当性検証のため,まず「ごんぎつね」の一章だけ教材試作を行い,小学校の普通学級児童を対象として,「物語の理解のしやすさ」に関して教科書と電子教材との比較評価実験を実施する.そして,この評価結果の指摘に基づき,可視化の有効性を向上させるためのデザイン改良を行い,「ごんぎつね」の電子書籍ソフトウエア一巻の試作を行う. 平成25年度(最終年度)には,浜松市発達医療総合福祉センターで療育を受けている発達障害児を対象として,電子書籍の理解度に関する有効性の評価実験と改良を行う. 評価方法としては,小学4年教科書用試験問題の正答率変化で分析を行う.まず,教科書「ごんぎつね」通読の後,試験問題を解答してもらう.次に電子教材通読を行い,再度,試験問題を解答してもらい,その前後の正答率変化を分析する.順序効果の影響を補正するため,電子教材通読試験後,教科書通読試験による変化分析も行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,電子書籍「ごんぎつね」ソフトウエア一巻の試作費用、被験者実験費用、研究発表費用で使用する。内訳は以下の通り。・消耗品 :180千円(パソコン消耗品類、参考書籍等)・国内旅費: 68千円(学会発表出張費等)・謝金等 :340千円(ソフト制作アルバイト費:800円×400h、被験者謝金等)・その他 : 30千円(学会発表投稿料等)
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