2012 Fiscal Year Research-status Report
松かさ燐片構成を応用した空間造形の研究 -環境に呼応するバイオミミクリ空間-
Project/Area Number |
23611044
|
Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
伊藤 泰彦 武蔵野大学, 環境学部, 准教授 (40515095)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲山 正弘 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (70337682)
|
Keywords | バイオミミクリ / 木質構造 / 空間デザイン / 立体造形 / 多重螺旋 / 松かさ |
Research Abstract |
本研究では、松かさ観察による多重螺旋配列の平面表記法の考察から、新たな空間デザインを探求している。形態分析・プログラミング・実空間の制作・形態的評価の4つの手順で進む。平成23年度の報告では、制作した空間についての特徴とともに、シームレスに形態変化する立体造形に可能性を指摘した。平成24年度は、以下の取り組みを行った。年度毎に1つの制作を計画していたが、よりスピーディに形態的な可能性を探求するため、3つの試作に取り組むこととした。 ①シームレスに形態変化する立体の試作・・・多種の植物にも、前述の配列パターンを確認した。タンポポの花から綿毛へと至る過程では、このパターンを維持しながら平面的な構成から球体へと姿を変えている。このことに着目し、平面・半球から徐々に2重のカテナリードームへと形を変える立体作品を制作した。ゼンマイばねを用いた装置であり、生物の成長過程をメタフォリカルに示すものである。 ②形態変化する建築空間の試作・・・先の立体作品を、建築家アントニ・ガウディのサグラダ・ファミリアの構造模型同様に、天地反転させた構造模型と見立て、形態変化する空間造形を模型で検証した。多重螺旋配列を基にボロノイ多角形の伏図を描く梁を構成し、ジャッキ状の柱で上下する構造体である。ジャッキ柱が伸びると荷重を周囲が負担するドームとなり、ジャッキ柱を下げるとメッシュ状の梁が柱として屋根を支える。 ③ドロネー図を基にした構造体の試作・・・前述の2つの状態を対比的に捉え、安定した構造体を考察することとした。多重螺旋配列を用いたドロネー図が梁伏図とし、多種の三角柱を組み合わせた構造体であり、②と同じ断面形を描く。1m×2m×高さ2.5mほどの小作品を制作した。 研究成果は、展示により逐次公開した。また、平成23年度の成果についても学術研究発表などで報告している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の報告では、当初計画した照度・表面温度による評価を見直し、形態特性にダイレクトにつながる研究の進め方(評価・考察)の検討を課題として挙げた。そこで平成24年度は、前年度の実作品の制作・評価を踏まえ、構造模型と構造体の試作・評価を繰り返すこととした。平成24年度、3つの試作に取り組んだことは、作業面という量的な進捗状況の順調さを示すと考えている。 本研究で掲げる「バイオミミクリ空間の試行」は、3つの段階から成る。「カタチ」から「カタ」を抽出し、「カタ」のオルタナティブの制作を通じて「カ」を考察し、「カ」すなわちヴィジョンを見据えた新たな「カタチ」を制作している。平成24年度の成果は、「生物の成長」というヴィジョンをこの研究の核に据え、形態変化する構造体を検討してきたことにある。このことは、研究目的により直結したものであり、質的な達成度に効果を発揮すると期待している。 また、当初の研究計画で、研究成果の逐次報告を掲げた。平成24年度は、日本建築学会建築デザイン発表会・日本木材青壮年団体連合会2012全国大会・公募型芸術祭SICF13・ジャパンホームショー2012・ジャパンショップ2013などでの展示や発表、「年鑑日本の空間デザイン2013」への掲載などに取り組んだ。また、木材活用コンクール木材活用特別賞を受賞し、成果発表の点でも一定の結果を得たものと判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
構造体の試作・制作と評価を繰り返す研究である。平成24年度は、構造模型・構造体の試作に注力し、連続した研究活動となった。制作したものは、公募型芸術祭(SICF)・研究機関内の施設・美術館(三鷹市芸術文化センター)で展示を行っているが、それぞれ2㎡前後の比較的小さな試作体3体である。1体目は、立体構成と重力の関係を視覚化することを目的に、木製枠組みの中にワイヤー・ゼンマイばね・帯鋼などで制作している。2・3体目は、立体造形のオルタナティブをスピーディに検証するため、紙質系のボード類で制作したものである。このため、予定以上の制作物の数となったが、比較的安価に研究を進めることが出来た。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究は、2年間の研究期間を残している。これまでの成果を発展させた制作に取り組み、研究をまとめる。 次年度については、限られた額ではあるが次年度使用額もあり、それを活用した木質構造物の制作に取り組む予定である。また、研究成果の逐次発表も課題である。これまで通り、日本建築学会の全国大会で研究報告を行う。一方、芸術祭等のイベントは情報発信力が高い。公募形式の芸術祭は計画が立てにくいが、機会を見つけてチャレンジしたいと考えている。
|
Research Products
(4 results)