2014 Fiscal Year Research-status Report
松かさ燐片構成を応用した空間造形の研究 -環境に呼応するバイオミミクリ空間-
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23611044
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Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
伊藤 泰彦 武蔵野大学, 環境学部, 教授 (40515095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲山 正弘 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (70337682)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | バイオミミクリ / 木質構造 / 建築デザイン / 空間デザイン / 立体造形 / 多重螺旋 / 松かさ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、松かさ燐片の多重螺旋配列の平面表記法を検討し、新たな空間デザインを探求している。平成23年度は木質ドームの制作に取り組み、平成24年度は平面から立体へと連続的に形態が変化する構造物を構想し試験体を制作した。平成25年度は、これまでの試作体の再評価と異種の動植物の造形に関する考察を行った。 この経緯のもと、平成26年度の活動は主に以下の2つのことに注力した。 1つは、平成25年度の成果から、新たな木質構造を考案し試作体を制作することである。これまでの試作体は、部材全てが異なる形をしていたが、部材の共通化を図り、小さな部材で冗長性のある構造形式を考えることとした。その成果として、「錐体卍格子構造」と銘打つ木質構造をあみ出し、実空間としての作品の制作に至った。325㎜×70㎜×厚9㎜の木板を用い、床・壁・屋根全てを同様の構造形式で空間を立ち上げることができた。研究計画で謳っている通り、本研究は学生の演習授業という教育的側面を有することに特徴がある。成果の一端が、日本建築学会主催学生グランプリなどで評価を得ることができた。 もう1つは、コンピュテーショナル・デザインとデジタル・ファブリケーションの技術を用いた、デザインの実験である。そこで、Rhnocerosとそのグラフィカル・アルゴリズミック・エディターであるGrasshopperを活用し、多重螺旋配列を基本図形にした構造体をつくり、3Dプリンターでダイレクトに造形を出力することにした。 前者は部材の共通化・標準化を徹底した構造体を目指すものであり、後者はパラメトリックなデザイン手法で標準化の対極を目指すものである。一方の優位性を検証することが、目的ではない。後者を経て、前者の可能性を再評価したいと考えた。そのまとめが、今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度に当初の研究計画を見直し、平成24年度に量的な進捗状況を説明し、平成25年度は質的向上を課題とした研究経過について報告してきた。平成26年度、新しい木質構造の試作体を開発し制作できたことは、大きな成果と考えている。同時に、その検証に向けた一つの手立てとして、パラメトリックデザインに着手した。研究当初は予定していなかったことだが、試作を重ねた構造体の可能性を考えるにあたり、必要だと判断した。その分、まとめに時間が必要となり、研究期間を1年延長することとなった。延長した平成27年度に、成果をまとめる。研究期間の延長により、時間的には遅れていることになる。しかし、予定を超えたプロセスを含むことから、質的達成度は高まると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1年間の研究期間の延長により、次年度が研究最終年度となる。 第一の目標は、これまでの成果のまとめである。各試作体の特性、パラメトリックなデザイン手法との比較、多重螺旋配列の空間的可能性について記述する。加えて、さらに改良した木質構造体の制作にも取り組みたい。また、教育と制作と連動した本研究プロセスについて報告をまとめ、成果に加えたいと考えている。 成果は、まずは紙媒体でまとめる。同時に、試作体や活動の展示の可能性を探る。展示は、本研究の枠組みでは予算面や運営面で課題があるため、公募展やコンクールなど認知度のある外部評価への応募にチャレンジする予定である。
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Causes of Carryover |
本年度(平成26年度)の試作体は、約2,000ピースから成る木質構造空間であり、その前段の試作体を含めて部材数や作業量は相当なものになった。しかし、より小さな部材を追究した結果、材料費に限ると経費は合理化できた。また、研究成果発表を次年度(平成27年度)にしたため、その分の研究費が残ることとなった。次年度の研究では、改良版木質構造体の制作や、研究成果の発表に取り組む。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
①研究成果のまとめでは、各試作体の手直し、3Dプリンターを含むPCおよびデジタルツールでの編集・出力作業を行う。そのための、木工およびPC作業における材料・消耗品の購入、およびその作業補助のアルバイトの謝金などに研究費を使用する。②改良版木質構造体の制作では、木工の材料・消耗品の購入などに研究費を使用する。③展示を含めた成果の発表では、交通宿泊費・運搬通信費などに研究費を使う。
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