2011 Fiscal Year Research-status Report
生活実態に基づいた漆器の審美性・機能性に関する実験的検証
Project/Area Number |
23611046
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
田中 みなみ 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (30261936)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 漆 |
Research Abstract |
平成23年度は、研究計画の(1)漆器の魅力についての文献調査および類語整理を行い、以下の結果を得た。漆および漆器について記述されている文献として、谷崎潤一郎(随筆家)、大西長利(漆芸家)、川上元美(家具デザイナー)、永瀬喜助(化学者)が表した文章に対してフリーワード分析を行い、「漆」と他の単語との関係を図式化し、漆器ならびに漆の魅力の核を導き出すことを試み、この結果、(1)全体構造は文章作成者の立場ごとにまとまった。また「漆」と他の単語との関係は、「漆」を中心に「生業」「ものづくり」「漆を塗ることに対する信念」「塗膜としての性状」「漆塗膜の審美的要素」に分かれた。(2)漆の美的観点ならびに用いることについての感覚的な評価については、「美」と「感」のふたつの単語がノードとなっており、中心は形成されなかった。このことから、(3)「用」と「美」は漆をとりまく多くのキーワードのひとつであり、ほかにも化学的性質や生業、制作における信念などがキーワードとして挙げられた。(4)すなわち、漆の魅力は、「塗料としての性質」すなわち用いる上での触覚や聴覚に与える快適さと、目に与える快適さである「美しさ」、そしてそれらが時間を経て継がれる「時間」の価値、さらに、製造者の自負「思い」の価値があることがわかった。研究結果については、『文献にみられる漆器の「用」と「美」の表現』として、相模女子大学紀要Vol.75A(2011)11-24に発表した。なお、本研究により得られたキーワードは、続く研究の主観評価等に利用する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究はおおきく(1)漆器の魅力についての文献調査と(2)漆塗膜の浸漬実験、摩擦実験による表面変化についての調査の二つについて行う計画となっている。このうち、(1)については予定通り進行しているものの、本務校での学生指導が多忙をきわめ、出張の日程が組めなかったため、(2)の実験用漆塗膜の準備とそのための打ち合わせが遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
8月の夏期休業を利用して試験用の漆膜サンプル片の制作にとりかかる。そのために、7月には試験を担当する部局との打ち合わせを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
岩手県にて試験用の漆膜サンプル片の制作を行う。そのための材料を購入するとともに、試験用の漆膜サンプル片の制作の打ち合わせならびに制作依頼のため岩手県に赴く。試験用の漆膜サンプル片の制作完了後、乾燥3ヶ月を経てから浸漬試験、摩擦試験を行うための実験の打ち合わせを行う。なお、H23科研費より、130万円ほど、H24年度へ繰越す。《繰越理由》H23年度に予定していた試験用の漆膜サンプル片の制作を実施するため。《繰越金の使途》試験用の漆膜サンプル片の制作にかかわる材料購入費、サンプル制作費、打ち合わせ旅費
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Research Products
(1 results)