2014 Fiscal Year Annual Research Report
生活実態に基づいた漆器の審美性・機能性に関する実験的検証
Project/Area Number |
23611046
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
田中 みなみ 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (30261936)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 漆 / 漆器 / テキストマイニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、漆器の今日的な価値を明らかにするため、(1)漆器の魅力に関する文献調査および類語整理、(2)漆塗膜の浸漬実験、摩擦実験による表面変化についての調査の2部構成の研究を計画し、このうち、(1)について、漆器について記述されている文献から、漆器の有用性および漆器の美的な魅力についてのフリーワード分析を行った。 この結果、「漆」と他の単語の関係は「ものづくりに対する信念」「化学的性質」「漆塗膜の審美的な要素」があり、これはすなわち、物質文化の3側面である〔ものそのものの物理的な性質〕〔ものに対する感覚的な側面〕〔ものに対する人の思い〕に対応することがわかった。また、「美しさ」と他の単語との関係性を分析した結果、「用」はノードを形成しなかったことから、漆器の「用」と「美」はいずれも漆器をとりまくキーワードのひとつであり、分けてとらえることはできないことがわかった。 (2)の漆塗膜の浸漬実験および摩擦実験については、実験まで至ることができなかった。理由は、微細質量の変化を計測することで、漆塗膜への付着物の量を算出し、溶剤への浸漬や摩擦での付着物の除去の可能性を探る予定であったが、質量変化がきわめて微細であるため、湿度の要因等をいかに考慮すべきかを検討し、結論が得られなかったためである。 今後、本研究を継続するとすれば、まず、微細な質量の変化が、付着物によるものであることを証明する等の前提を確実にするところから始めたいと考えている。
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