2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞内1分子計測法を用いた機械刺激によるSrcキナーゼ活性化機構の解析
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23612002
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小林 剛 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40402565)
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Keywords | シグナル伝達 / 生物物理 / 1分子計測 |
Research Abstract |
「機械刺激によるSFK活性化に、SH2やSH3ドメインを介した分子間相互作用の他に、N末端の脂質鎖によるSFKの接着斑近傍への集積制御が寄与している」という作業仮説の検証を目指している。本年度は、培養細胞にSrcとFynのN末端の脂質鎖やSH3ドメインを含む蛍光プローブを接着斑のプローブと共発現し、生細胞の細胞膜上において多分子ト1分子レベルでライブ観察し接着斑近傍での動態を解析した。その結果、SH3ドメインを含むプローブは通常の蛍光顕微鏡観察においても接着斑に強く局在するのが認められた。1分子レベルの観察では、接着斑上にそのプローブ分子が数秒間停留している様子が観察された。さらに、細胞に押し付けた微小ガラス針を動かしたり、細胞に接着したファイブロネクチンでコートしたビーズを介し光ピンセットで力を負荷した場合、接着斑以外の細胞膜上で停留するプローブが刺激後1分をピークに一過的に増加した。一方、N末端の脂質鎖のみを含むプローブは、マクロレベルでは細胞膜表面全体に分布していたが、1分子レベルで観察すると、大部分のプローブ分子が脂質分子と同等な早い拡散運動を示したが、接着斑近傍で、150ミリ秒ほど一時的に停留している分子が存在することが分かった。薬剤処理により接着斑にかかる張力を低下させるとその停留する分子数が減少し、逆に力を負荷すると増加した。さらに、力を負荷すると、SH3ドメインを含むプローブと同様に、接着斑以外の細胞膜上においても停留する分子が増加した。これらの結果は、機械刺激前後のSFK動態制御には、SH3ドメインなどを介した分子間相互作用のみならず、N末端の脂質鎖も関与している可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初のH24年度実施計画どおりに進行し、期待通りの結果を得ているため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの得られた結果に基づき計画を進め、機械刺激前後の接着斑におけるSFK活性化制御に携わるホスファターゼの動態の解析を進める。その際には、そのホスファターゼの機能や発現を抑制し、SFK活性化とその細胞内での動態がどう影響受けるか解析する。また、SFKの中でSrc分子の他に、N末にミリスチン酸に加えてパルミチン酸も付加されているFynにも注目し、各種プローブも1分子観察し、その脂質鎖を介した動態制御をSrcと比較しながら解析する。さらに、機械刺激前後のSFKのプローブとホスファターゼとの間の相互作用をCFP-YFP等のタグを利用してFRET法により解析する。この場合、多分子レベルのイメージングを行う。また、細胞抽出液中の共沈物の解析等の生化学的な手法を用いて相補的に解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養培地・器具や分子生物・生化学用試薬に関しては、前年度と同様のペースで実験を行うと考えて同額を使用する予定。旅費に関しては、国内出張)を3回と海外出張を1回を予定している。また、研究成果発表費の支出も予定している。
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Research Products
(2 results)