2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23612003
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
辰巳 仁史 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20171720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
早川 公英 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任講師 (60467280)
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Keywords | mechanosensor / cofilin / actin |
Research Abstract |
張力はどのような構造上の変化をアクチン線維に起こし、コフィリンの結合を抑制するのであろうか?われわれは、力をアクチン線維に負荷するとアクチン線維の張力が増加し、アクチン線維を構成しているGアクチン分子間の運動の自由度が下がるのではないかと考えている。それによって、アクチン線維の長軸の周りの回転が抑制されて、その結果コフィリンの結合サイトがコフィリンに対して露出しなくなるというものである。 張力依存的コフィリン結合がアクチン線維のどのような張力依存的構造変化に起因するのかを明らかにする実験を行った。これまでの実験に基づく予想では張力が減じるほどアクチン線維の捻れ方向の回転揺らぎが大きくなる。単一アクチン線維の一端に微小ガラスビーズを固定して、ガラスビーズに光ピンセットで力を付加しつつ、その回転揺らぎを1分子イメージングで解析した。その結果からアクチン線維へ数ピコNの力を付加するとアクチン線維の捻れ報告の回転揺らぎが減少する(逆に力の付加を止めると回転揺らぎが大きくなること)が観察された。ここから、力の付加はアクチン線維の捻れのゆらぎを減少しコフィリン結合を抑制することが推測された。 コフィリンが作用してアクチン線維がねじれることも検討対象である。これまでの予備的な実験はコフィリンの結合がアクチン線維のねじれを起こしていることを示すものであったが、データの信頼をさらに上げるためには、アクチン線維一本がガラスに結合し、その結合自身がアクチン線維の揺らぎに与える影響を少なくする条件を割り出す必要がある。現在、上記の実験条件を見つけつつあり、その条件のもとでアクチン線維のコフィリン結合によるねじれの分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
張力依存的コフィリン結合がアクチン線維のどのような張力依存的構造変化に起因するのかを明らかにする実験の部分は順調に研究が進んだ。 一方、コフィリンが作用してアクチン線維がねじれることも検討対象である。この研究ではアクチン線維一本がガラスに結合すると、その結合自身がアクチン線維の揺らぎに影響を与えることが新たに分かった。これに対処する実験系の組み立てに時間が必要であった。この課題はおおむね克服できる見込みが得られつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題:実験溶液を酸性条件(pH6.5)にすることでコフィリンによるアクチン線維の切断を抑制することができ、しかもコフィリンのアクチン線維への結合は観察できることが知られている。この性質を用いて一分子アクチン線維への一分子蛍光ラベルコフィリンの結合を分析するための条件を現在検討しており、アクチン線維一本に対して一分子コフィリンが結合する時間過程の分析を始めている。現在この一分子測定から推定される結合と解離のパラメータは、生化学的な数値とのよい一致を見ているので、正しく結合と解離が観察されている。この条件のもとで一分子アクチン線維にコフィリンの結合を行い、コフィリンの結合を直接確かめつつ、アクチン線維のねじれ過程の分析が可能になると思われる。この実験系は生化学的な実験では直接見ることのできない分子反応の過程をつぶさに観察し分析するブレークスルーの機会を与えてくれるものと確信している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験を遂行するにあたって必要な光学部品、ビーズを含めた試薬、学会出席のための旅費、および論文の出版費用に研究費を使用する予定である。
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