2012 Fiscal Year Research-status Report
昆虫飛翔筋の神経系を介さないメカノセンシング機構の解明
Project/Area Number |
23612009
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
岩本 裕之 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主幹研究員 (60176568)
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Keywords | メカノセンシング / 昆虫飛翔筋 |
Research Abstract |
脱膜したマルハナバチ飛翔筋線維をカルシウムで活性化し、伸張したときにX線回折像中に最初に現れる変化は第1層線上の1,1反射スポットの増強であり、これが昆虫飛翔筋の高速振動にとって重要な「伸張による活性化」の引き金となる構造変化を反映している可能性が高い。この考えが正しければ、「伸張による活性化」を示す他の昆虫種の飛翔筋も伸張時に同様の回折像変化を示すと期待される。そこで今回、タガメとガガンボの2種の昆虫の飛翔筋を用いて同様の回折実験を行なった。その結果、この2種の昆虫の場合も伸張時に第1層線上の1,1反射スポットが増強することが明らかになった。特にガガンボの場合、反射スポットの増強は顕著であった。従って1,1反射スポットの増強は、「伸張による活性化」を示す昆虫の飛翔筋に普遍的な現象であると考えられる。 また、予定通り生きたマルハナバチを用い、羽ばたき中の飛翔筋からの回折像と羽の動きを同時記録した。これによりマルハナバチの胸部にある2種の拮抗する飛翔筋の動作タイミングを記録できたばかりでなく、回折像より筋肉長、発生張力、ミオシン頭部の結合解離などの時間経過を克明に記録することができた。何よりも重要なのは上記の1,1反射スポットの増強は生きた昆虫の飛翔筋においても起こっており、その強度変化は脱膜した標本の場合より顕著であることが明らかとなったことである。この1,1反射スポットの増強はアクチンに結合したミオシン頭部が伸張時に特定の構造変化を起こすことで説明できる。この成果について現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記の生きた昆虫を用いた実験は成功に終わり、予想以上に重要な知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、X線ホログラフィー法による構造解析、RNAi法による機能解析等を行なう予定。またトロポニンIの長い延長部の役割を解明する実験、ガガンボに見られる特異な子午線反射の起源の解明、昆虫飛翔筋の進化に関する実験、飛翔筋研究のモデル動物であるタガメのゲノム解析などを予定。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記「生きた昆虫を用いた羽ばたき中の飛翔筋からの回折像と羽の動きの同時記録」に係る経費が予想より少なく済んだたため当該助成金が発生した。当該助成金は25年度に請求した助成金と合わせて、X線ホログラフィー法に必要な機材の購入、タンパク同定、電子顕微鏡による構造解析、ゲノム解析の外注費用、X線ビームライン使用に必要な消耗品実費負担(定額制)などに使用予定。
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Research Products
(5 results)