2013 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫飛翔筋の神経系を介さないメカノセンシング機構の解明
Project/Area Number |
23612009
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
岩本 裕之 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主幹研究員 (60176568)
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Keywords | メカノセンシング / 昆虫飛翔筋 |
Research Abstract |
蚊のような小型の昆虫は、500Hz以上の周波数で羽ばたいて飛ぶ。通常の収縮・弛緩の繰返しでは実現不可能な高周波の羽ばたきを可能にするのは、昆虫飛翔筋の高い自励振動能力であり、これには「伸長による活性化」(SA)というメカノセンシング機構が必須である。しかしSAの分子機構は今まで分かっていなかった。本研究は昆虫飛翔筋のSAの分子機構を明らかにする目的で行われた。3年間の研究期間で明らかになったのは以下のとおりである。 まず、SAの分子機構について従来最も有力だった説は、伸長のシグナルが昆虫飛翔筋特有のトロポニンI の長大な延長部によってトロポニン複合体に伝えられ、これが収縮装置を活性化するという仮説である。しかし、本研究で酵素処理によってこの延長部を97%取り除いてもSAは殆ど影響を受けなかったため、この仮説は否定された。それでは一体何が伸長のシグナルを検知しているのかを明らかにするため、マルハナバチから単離した脱膜飛翔筋細胞標本を用いて高速時分割X線回折像記録を行った。その結果は、1msで完了するステップ伸長を加えたとき、111反射と201反射の相補的強度変化が最も早く起こる変化であることを示した。この変化はSAと同じくカルシウム依存的に生じたため、SAとの関連が予想された。さらに生きて羽ばたいているマルハナバチを用いて直接に高速時分割X線回折像記録を行ったところ、上記強度変化は伸長が起こるタイミングで一層顕著に起こることが明らかになり、理論計算によって、この強度変化がアクチンに結合したミオシンの変形で説明できることが示された。25年度はさらに理論計算を3次元に拡張することで、伸長時にまさに予想されるミオシン頭部の長軸方向の変位が上記強度変化を説明することを明らかにした。これらにより伸長によるミオシン頭部の変形がSAの引き金になっていることはほぼ明らかと思われる。
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Research Products
(12 results)