2012 Fiscal Year Research-status Report
橋渡し研究被験者の理解度・心理状況の解析に基づく説明文書作成ルールの策定
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23613002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長村 文孝 東京大学, 医科学研究所, 教授 (90282491)
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Keywords | 説明同意文書 / トランスレーショナルリサーチ / 理解度 / 心理状態 |
Research Abstract |
臨床試験においては、文書によるインフォームド・コンセントの取得が必須である。説明すべき項目は該当する法規・ガイドラインにより定められている。近年、研究の資金源、利益相反、知的財産権が発生した場合の帰属先等必要な項目が増加しており、これは被験者にとっては理解するのに困難さを要する場合もあり、また、生死に係わる疾患に対する治療を目的とした試験では、特に被験者が知りたい情報と乖離が生じていると考えられる。また、一般に記載の順番は該当する法規・指針の提示している順番であることが多く、被験者に説明してはいるものの、実際には理解の得られていない説明となってしまい、むしろ被験者保護の観点から考えるとむしろ障害になっている可能性が存在する。特に被験者への説明に関して困難が伴うのは、他に標準療法の無い段階であり、生存・QOLに直接影響のある患者を対象とした早期試験である。アカデミア発の橋渡し研究(トランスレーショナル・リサーチ:TR)では被験者保護と倫理的な施行は最大の遵守事項である。しかし、TRでは、遺伝子治療、細胞療法、免疫療法、再生療法等の新しい概念の治療法が多く、被験者はそのため、試みられる治療法に対して過剰に期待する傾向にあり十分な注意が必要である。本研究では、特にTRにおける説明文書の理解に及ぼす因子とその影響度を科学的に検討し、それを基にした説明文書の作成のためのテンプレート及び作成要領の作成と実証、そして公開を目的とする。このような、より効率的なツールの作成により負担の軽減を図ることができるのと同時に、他の医療機関に本研究の成果を活用してもらい、「説明はよくしてもらったが、項目が多すぎ、実はよく理解できていない」という皮相的な説明状況を来すことがなくなり、より被験者の理解とそれによる臨床試験倫理の向上に役立てることを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度から引き続き、当院にてTRに参加した被験者の心理状況と理解度の臨床心理士が実施した評価シートの解析を行った。これにより心理状態がコントロール出来ている状態である場合には理解度が低く、また臨床試験に対しての期待が大きい事が示唆された。反対に心理状態がコントロールされている被験者では理解とが高く、臨床試験の効果・安全性に関して医療者の意図を比較的良好に捉えられていることが示唆された。このため、適切なインフォームド・コンセント取得のためには心理状況の把握とそれに対する傾向を把握している必要があることを示すことができた。 本研究では、臨床試験を対象としているが、平成24年度にヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針が大改訂された。この中では、同意の撤回の取り扱いが改正の大きなポイントの1つであった。当院の臨床試験においても同意の撤回が試験への参加の中止のみに絞るのか、それまでに得られたデータも含めて撤回・破棄を含めるのか、あるいは自発的な申し出に留めるのかの議論がなされてきた。このため、観察研修に分類されるものの同指針の撤回を参考として改めて検討を行い、同意の撤回の説明とその在り方については平成25年度に引き続き検討を行う。 本年度は説明文書の作成の手引きと雛形について検討を行った。最近の臨床開発では再生医療が特に進歩し、そのリスク評価も変化しつつあることから、間葉系幹細胞を中心に検討を行い、記載内容の修正を行い、医療者間で評価を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においては過去のがんを対象としたTRへの参加者の心理・面接に関する評価書を基にした被験者の理解度、心理状況が試験参加後の身体状況の変化によりどのような変化を及ぼすのか、説明文書の記載とその理解がどのように関連するのかを明らかにすることが1つの達成目標であったが、これに対しては上記のように検討項目を抽出することができた。平成25年度は、この情報を以下に説明の場に活かすかの方法を取りまとめることである。 本研究のもう1つの目標は、上記を活かした説明同意文書作成の手引きと文書の雛形を作成することである。説明文書を作成・使用する医療者側の評価と、説明されて理解に実際に役に立ったのか否かをの被験者の感想が本研究の評価として必要である。平成24年度から研究者の評価を始めているところであるが、平成25年度に研究者の評価を行う。また、研究者の評価をとりまとめ、内容の検討を行い、実際のTRでの説明同意文書に応用する。被験者の評価を得ながら、適宜改訂を行い、平成25度中に作成を終了する。これらの成果は、学会等にて発表公表するとともに当院所定のHPより成果を公表し、HP上の情報に関しては著作権で制限することなく自由に使用できるものとする。また、より多くの医療機関と連携し、情報をフィードバックしてもらうことにより施設による差異を無くし一般化できるように対応する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の本研究では、上記の様に下記の事項を実施する。①リスク。ベネフィットの評価の変化の激しいTRにおいては被験者へ説明すべき事項は変化が著しく、どのようなことがリスクとなり、それをどのように伝えるのかは学会等で議論がなされるところである。このため、国内外の学会を通じて情報収集を引き続き行うとともに専門家との情報交換を行う。また、学会においても成果を報告していく。②説明文書の作成の手引きと雛形を作成し、医療者間での評価を経て実際の臨床試験で導入していく。これにより有用性の検証を行う。③作成時に配慮すべき点を網羅したた手引き及び雛形をホームページ等で公開する。①のためには国内外の学会に出席し、②および③は消耗品の購入が必要となる。また、成果を英文誌に投稿する場合には英文校正を行う。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Unrelated cord blood transplantation after myeloablative conditioning regimen in adolescent patients with hematologic malignancies: a single institute analysis.2012
Author(s)
 Ebihara Y, Takahashi S, Mochizuki S, Kato S, Kawakita T, Ooi J, Yokoyama K, Nagamura F, Tojo A, Asano S, Tsuji K
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Journal Title
Leukemia Res
Volume: 36
Pages: 128-31
Peer Reviewed
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