2011 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける人を対象とした遺伝子解析技術の利用実態とその社会的課題
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23613003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
洪 賢秀 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (70313400)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 東アジア / 日本 / 韓国 / 台湾 / 遺伝子解析技術 / 意識調査 / インタビュー調査 |
Research Abstract |
[研究目的] 人を対象とする医療・検査技術、とりわけ遺伝子解析技術の登場は、各社会で広く用いられるようになり、その応用範囲も多様化している。個人遺伝情報は家族や血縁と共通の情報をもつために、情報漏えい・差別問題などに繋がりやすいセンシティブ情報として、その在り方について社会的・倫理的な面から議論を積み重ねてきた。だが、このような議論は、個別の領域で論じられてきたために、遺伝子解析技術のあり方を横断的・総合的に捉える事が容易ではない。また、強い親子関係の絆をもつ東アジアでは、遺伝子解析技術の利用に対して、より慎重な議論を要するものと考えられる。本研究目的は、東アジア、とりわけ日本と韓国において、遺伝子解析技術にどのように対応しているかを比較検討することで、規制状況の異なる日韓の遺伝子解析技術の社会的背景を明らかにするとともに、東アジアにおける遺伝子解析技術の有効活用や理解を深めるための方法を模索することである。[研究実績](1)遺伝子解析技術の提供・利用状況について、日韓における遺伝子解析技術の利用状況について文献調査を実施した。(2)遺伝子解析技術の登場と遺伝に関する文化的・社会的認識の表象について、i)韓国のマスメディア等の資料(1980年以後)を収集し、「遺伝」に関連する言説を分類・整理した。ii)日本と規制の異なる韓国や台湾における遺伝子解析技術をめぐる認識を比較検討するために、韓国・台湾の意識調査用質問と、フォーカス・グループ・インタビューガイドを作成し、検討後に翻訳を行った。(3)遺伝子解析技術の管理・規制をめぐる動向を明らかにするために、日本の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」見直し、韓国の「生命倫理および安全に関する法律」全部改正、台湾の「人バイオバンク管理条例」の立法化や「個人情報保護法」改正における関連資料を収集し分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)日韓台における遺伝子解析技術の提供・利用状況について、文献調査を実施し関連資料を収集し、整理・分析を行っている。また、本年度実施予定であった医療目的における遺伝子解析技術の提供側へのインタビュー調査を、平成24年度実施に変更した。なぜならば、平成24年実施予定の一般市民対象の意識調査およびフォーカス・グループ・インタビュー調査結果を踏まえて、提供者側をインタビュー調査をすることで、文化的・社会的特徴を提供者側がどう認識しているのかを、より深く掘り下げることができると考えたからである。 (2)遺伝子解析技術の登場と遺伝に関する文化的・社会的認識の表象について、i)韓国の1980年代以後の主要8新聞記事および2大テレビ局のニュースを対象に、「遺伝」に関連する言説分析を実施した。ii)日本と規制の異なる韓国や台湾における遺伝子解析技術に関する認識を比較検討するために、既に実施した日本の意識調査票を基に韓国語および中国語に翻訳した。翻訳においては、比較の信頼性を確保するために、各2人に本調査票の翻訳を依頼し、さらに逆翻訳を実施した。そのために、調査票の作成に予定より時間を費やした。iii)文献調査を踏まえて、フォーカス・グループ・インタービューガイドを作成した。 (3)遺伝子解析技術の管理・規制をめぐる動向を明らかにするために、i)日本の「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」見直しについての資料収集、ii)韓国の「生命倫理および安全に関する法律」全部改正の資料収集および主管部署担当者へのインタビューを予定とおりに実施した。一方、台湾は、研究協力者である張瓊方が、「人バイオバンク管理条例」の立法化や「個人情報保護法」改正における関連資料を収集し、調査を実施した。 以上のように、韓国および台湾での意識調査の準備や調整等に予定より多少時間がかかったもののおおむね予定とおり研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)日韓台を対象に実施する意識調査およびフォーカス・グループ・インタビューの結果を踏まえて、医療目的における遺伝子解析技術の提供側を対象に、日韓台でインタビュー調査を2012年8月~9月に実施する予定である。 (2)すでに他の共同研究で実施した日本の意識調査の結果と、韓国・台湾との比較分析を行うために、韓国と台湾の一般市民(20代から50代の男女、2,000人)を対象に意識調査をインターネットで実施する。調査は、両国の調査会社(韓国:韓国リサーチ、台湾:EOLembrain東方快線)に依頼し、2012年5月~7月に実施する。本意識調査の結果を踏まえて、文化的・社会的な特徴をより明らかにするために、フォーカス・グループ・インタビューを行う。一般市民(20代から50代の男女)を対象に、4つのグループ(各グループ5~6名)に分けて、2012年7月~8月に韓国と台湾で各々実施する。 (3)遺伝子解析技術の管理・規制について、引き続き日本・韓国・台湾における規制側のインタビュー調査を実施する。日本では「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」改正にみる特徴および課題について、韓国では「生命倫理および安全に関する法律」全部改正による細則の方向付けについて、台湾では、「人バイオバンク管理条例」や「個人情報保護法」改正の特徴や課題を抽出し、3カ国における政策の比較検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
[インタビュー調査の実施](1)医療目的での遺伝子解析技術の利用状況について、韓国および台湾における遺伝子解析技術の提供側にインタビュー調査を実施する。(2)遺伝子解析技術の管理・規制について、日本・韓国・台湾における規制側のインタビュー調査を実施する。(3)韓国および台湾における意識調査の結果を踏まえて、医療目的・個人識別目的での遺伝子解析技術に対する認識についてフォーカス・グループ・インタビュー調査を実施する。(韓国・台湾への旅費、調査インタビューのテープ起こし代<韓国語および中国語を含む>)[意識調査の実施]韓国および台湾において一般市民(各国2,000人)を対象に、インターネットで意識調査を実施する。(調査委託費および参加者への謝金等)
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Research Products
(3 results)