2012 Fiscal Year Research-status Report
東アジアにおける人を対象とした遺伝子解析技術の利用実態とその社会的課題
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23613003
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
洪 賢秀 東京大学, 医科学研究所, 特任助教 (70313400)
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Keywords | 遺伝子解析技術 / 東アジア / 生命倫理 / 意識調査 / インタビュー調査 |
Research Abstract |
[研究目的]人を対象とする医療・検査技術、とりわけ遺伝子解析技術の登場は、各社会で広く用いられるようになり、その応用範囲も多様化している。個人遺伝情報は家族や血縁と共通の情報をもつために、情報漏えい・差別問題などに繋がりやすい機微情報として、その在り方について社会的・倫理的な面から議論を積み重ねてきた。だが、このような議論は、個別の領域で論じられてきたために、遺伝子解析技術のあり方を横断的・総合的に捉える事が容易ではない。また、強い親子関係の絆をもつ東アジアでは、遺伝子解析技術の利用に対して、より慎重な議論を要するものと考えられる。本研究目的は、東アジア、とりわけ日本と韓国において、遺伝子解析技術にどのように対応しているかを比較検討することで、規制状況の異なる日韓の遺伝子解析技術の社会的背景を明らかにするとともに、東アジアにおける遺伝子解析技術の有効活用や理解を深めるための方法を模索することである。 [研究実績]①日本・韓国・台湾における遺伝子検査に関する一般市民を対象にWEB意識調査を実施した。その結果、日本では「遺伝子検査」や関連知識に対する関心が韓国や台湾に比べて低いことが明らかになった。このような結果を踏まえて、さらに文化的・社会的な背景や認識の違いを、掘り下げるために、韓国ソウル市や台湾台北市に居住する一般市民を対象に、フォーカス・グループ・インタビューを実施した。②韓国の「生命倫理および安全に関する法理」全部改正に至った背景や、「遺伝子検査」の規制の動向について、ステーク・ホルダーを中心にインタビューを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、日本・韓国・台湾の一般市民を対象とした、「遺伝子検査」に関する意識調査およびフォーカス・グループ・インタビューおよび個人インタビューを実施した。 1.遺伝子解析技術の利用側の調査:①日本・韓国・台湾における遺伝子解析技術に関する一般市民にWEB意識調査を実施した。各国ともに、男女比・人口比および地域比を考慮し設計を行い、実施は専門調査機関に委託した。日本の調査においては、予算の関係上、他助成金を受けて、同様の意識調査を実施した。韓国と台湾は、各国20~50代の男女、2,000名を対象にした。調査は、両国の調査会社(韓国:韓国リサーチ、台湾:EOL embrain東方快線)に依頼し、2012年5月~7月に実施した。調査から得られた集計データを整理し、3カ国の比較分析を行った。②3カ国の意識調査の結果を踏まえて、さらに文化的・社会的な背景や認識の違いを掘り下げるために、韓国ソウル市(20~50代の男女、合計32名)や、台湾台北市に居住する(20~50代の男女、合計28名)一般市民を対象に、フォーカス・グループ・インタビューを実施した(2012年6月および8月)。 2. 遺伝子解析技術の提供側の認識や実態を明らかにするために、日本、韓国、台湾で個人インタビューを実施するとともに、関連集会に参加して参与観察を行った。 3.遺伝子解析技術の管理・規制する側の認識や、現状および今後の動きを捉えるために、日本、韓国、台湾でステーク・ホルダーへのインタビューを実施した。 以上のような調査結果のデータ整理し、分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本・韓国・台湾を対象に実施する意識調査およびフォーカス・グループ・インタビューの結果を踏まえて、フォローアップ・調査を実施する予定である。とくに、日本で臨床研究として新しくはじまった「無侵襲的出生前遺伝学的検査(non-invasive prenatal genetic testing; NIPT)」は、意識調査やフォーカス・グループ・インタビューで調査できなかった。この検査は、韓国や台湾でもすでに開始されているために、韓国や台湾社会では、どのように受容されているのかを明らかにするために、提供側や規制側のインタビュー調査を実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
[フォローアップ・インタビュー調査の実施] ①日本・韓国・台湾における「無侵襲的出生前遺伝学的検査(non-invasive prenatal genetic testing; NIPT)」提供側にインタビュー調査を実施する。 ②遺伝子解析技術の管理・規制について、日本・韓国・台湾における規制側のインタビュー調査を実施する。 ③韓国および台湾における「無侵襲的出生前遺伝学的検査(non-invasive prenatal genetic testing; NIPT)」対する認識について、一般市民を対象にフォーカス・グループ・インタビュー調査を実施する。 (韓国・台湾への旅費、調査インタビューのテープ起こし代<韓国語および中国語を含む>)
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Research Products
(3 results)