2011 Fiscal Year Research-status Report
米国ワシントン州の終末期医療と尊厳死について:今後の課題と我々への示唆を探る
Project/Area Number |
23613008
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
蒲生 忍 杏林大学, 保健学部, 教授 (90122308)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 緩和医療 / 終末期医療 / 尊厳死 / 国際研究者交流 / 米国 |
Research Abstract |
米国ワシントン州(以下、ワ州)では州民の直接請求により2008 年に尊厳死法が成立・施行された。1997 年のオレゴン州に続き、終末期の患者が自身で服用することを条件に致死量の薬剤を処方することを許容する法である。オレゴン州の尊厳死法施行後10 年を経過し、各地の医療提供者(以下、医療者)が緩和医療の改善を行い、新しい医療モデルを導入し終末期医療に対応してきた。新たに尊厳死に直面するワ州で医療者がどのような立場で尊厳死に直面しているのかを探ることを目的として、2012年度はワシントン大学 family medicineの准教授で、大学病院で緩和医療の責任者であるDr. Stuart Farberを3月3日から10日の間に招聘し、京都大学こころの未来センターCarl Becker教授を交えた意見交換、杏林大学医学部麻酔学萬教授との意見交換及び附属病院の緩和医療チームとの病棟回診、カンファレンス参加、教育講演等を行った。Becker 教授を交えた討論では、緩和医療の患者との対話方法に関して、また患者及び医療者にとってのparadox、safeという概念について詳細な討論が行われた。Farber博士と代表者との尊厳死に関する対話では、博士自身は尊厳死を必ずしも積極的に推進する立場ではないが、その臨床経験から、患者に尊厳死を含む選択肢を明示することにより患者とのコミュニケーションが開けること、患者が尊厳死用薬の処方を入手しても実際に使用する例は医療者側の対応により変化すること等が示され、また、尊厳死推進派の医師との立場の違いついても言及した。Farber博士が日本の病棟回診に同行した際に、日本の医師は疼痛緩和に優れているが、臨床において患者と死について語ることを忌避する傾向があることを指摘した。これらは今後の検討に際し重要な示唆を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
202011年夏季に渡米し米国の研究協力者ワシントン大学Thomas McCormick博士と研究計画について協議し調査に着手する予定であったが、準備の遅れ及び、計画停電や節電等で学務が中断する夏季休暇の余裕が乏しく、渡米調査には着手できなかった。また招聘事業もFarber博士の日程の都合上、年度末近くになった。しかしながら、メール等による連絡で協議は進め、また招聘時の詳細な対話により一定の成果は達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年は米国での調査に着手できなかったので、2012年は夏季休暇中及び秋の学務が比較的少ない時期に可能な限り渡米し面接調査、及び関連する学会への出席を予定する。日本での終末期医療に関わる医療者の意識を探るために、日本の関連学会の年次学術大会等に可能な限り参加する。一般での意識を探るため市販のリビングウィルについての内容分析を追加して実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
概ね当初の計画に従う予定であるが、初年度に物品費の支出が多かったため、図書等の購入予算を確保するため必要に応じて旅費または人件費から物品費への直接経費内訳変更を申請する。
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