2012 Fiscal Year Research-status Report
米国ワシントン州の終末期医療と尊厳死について:今後の課題と我々への示唆を探る
Project/Area Number |
23613008
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
蒲生 忍 杏林大学, 保健学部, 教授 (90122308)
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Keywords | 国際研究者交流 / スピリチュアルケア / 緩和医療 / 全人的痛み |
Research Abstract |
①終末期医療におけるスピリチュアルケアを重要な要素と考える国内の主要な4学会(日本緩和医療学会・スピリチュアルケア学会・日本死の臨床研究会・日本臨床死生学会)の年次学会に出席しスピリチュアルケアの捉え方についての動向と情報を収集した。 ②8月に米国ワシントン大学を訪問し、生命倫理学教室が主催する25th Summer Seminar for Healthcare Ethicsに参加した。本セミナーは研究協力者Dr. Thomas McCormickが主催するもので、臨床倫理委員会の研修の場として米国で高い評価を得ている。セミナーにはワシントン州のみならず、近隣の諸州やカナダからも多くの医療提供者が参加しており、米国での終末期医療やスピリチュアルケアの現状について多くの経験談や意見を聴く機会を得た。 ③10月にワシントン DCで開催されたAmerican Society of Bioethics & Humanities年次総会に出席した。多数の講演の中でも尊厳死に関しては“Physician-Assisted Suicide”のセッションで取り上げられたのみならず、Late Breaking News SessionとしてカナダでのPhysician Assisted Dyingに纏わる事例が報告されたのに注目した。 ④引き続き、ワシントン州シアトル市を訪問し、ワシントン大学の医療人類学者James Green博士、School of NursingのSarah Shannon准教授、NPOの“Compassion and Choice”の顧問であり循環器科の医師Tom Preston博士とワシントン州尊厳死について面接調査した。 ⑤H25年3月にMcCormick博士を招聘し、研究打合せを行うと共に、Spiritual Care及びAutonomyに関する講演を依頼した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度には尊厳死推進派のキーパーソンで、Compassion & Choiceの顧問医師であるDr. Tom Prestonとの面接を行うことが出来た。終末期における鎮静や医療中止はその「目的」が重視され「結果」の如何は問われない所謂「二重効果」論で一般的に擁護される。一方、Preston医師は尊厳死を含めた患者の選好を重視すると共に、「二重効果」論を欺瞞であるする意見を述べた。またPreston医師から今後の情報提供についても快諾を得ることができ、最新の著書 “Doctor, please help me die.”を得た。 ワシントン州の医療提供者は、尊厳死の要求に対してそれを拒否することなく、Narrative approach や充実したスピリチュアルケアで対応しようとしている現状が明らかになりつつある。この姿勢はPreston医師においても基本的に共通している。今後は医療提供者の対応の一層の把握につとめることで、本研究をより有意義なものにできると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は本研究の最終年度であり、より一層の研究成果を得るために次の二点の研究計画を重点的に推進する。 ①米国での医療提供者への聞き取り調査を充実させる。このため、8月の大学休業期に渡米し数名の終末期医療の関係者、特に癌医療と慢性疾患、スピリチュアルケアのキーパーソンに対し尊厳死や終末期のスピリチュアルケアに関する面接調査を行う。現在、研究協力者を介して人選と調整を進めている。 ②この訪米の際にはワシントン大学生命倫理学教室が主催するSummer Seminar for Healthcare Ethicsでの講演を依頼されている。この講演では近未来に少子超高齢化社会を向える日本の問題を取り上げる予定である。近未来の日本社会では、超高齢化と労働人口の減少に伴う社会構造の変化は世代意識の変化を生み出し、疾病構造も変化する。その結果、従来とは異なる終末期や医療倫理問題が生じる可能性が高い。それらの問題的を整理し、米国での尊厳死やスピリチュアルケア等の現状と対比しつつ研究成果の英文論文化を目指す。このため、研究協力者のMcCormick博士と8月に綿密な打ち合わせを予定している。また、最終的には年度末2-3月に渡米し論文化の作業を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究経費の主要部分は、訪米しての医療提供者の面接調査旅費(8月Washington州Seattleと周辺)、American Society of Bioethics & Humanities年次総会での情報収集(10月Georgia州Atlanta)及び研究成果論文化打合せ訪米旅費(H26年2-3月に研究協力者McCormick博士の冬季滞在先であるArizona州Phoenix)への充当を予定している。 また残りは研究成果の取り纏めのための謝金(英文校正・講演筆耕等)、図書購入、その他へ充当を予定している。
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Research Products
(1 results)