2012 Fiscal Year Research-status Report
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23614002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
敷田 麻実 北海道大学, 観光学高等研究センター, 教授 (40308581)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海津 ゆりえ 文教大学, 国際学部, 准教授 (20453441)
西村 千尋 長崎県立大学, 経済学部, 教授 (60237732)
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Keywords | 中間システム / 地域ツーリズム / 地域振興 / 観光まちづくり |
Research Abstract |
2012年度は、現地調査を研究代表者・研究分担者ともそれぞれのフィールドで調査を進めるとともに、研究組織全体で三重県鳥羽市及び長崎県佐世保市での合同調査を行った。また、観光まちづくりや着地型観光に関する文献や資料を収集し、基本データベースの作成を進めた。また研究成果として、海外の学会での発表2件、国内発表2件、査読付き論文が3件であった。なお7月、11月、3月に3回の共同研究会を開催した。第1回研究会では関係性モデルと現地合同調査について検討し、2-3回目は、フィールド調査の結果の検討と今後の成果とりまとめ議論を行った。 調査対象地は、合同調査では上記の三重県鳥羽市及び長崎県佐世保市を選定した。また個別調査では、長崎県五ヶ瀬町、北海道知床地域および新潟県村上市を調査した。海外調査として予定していたボゴール市(インドネシア)については、予備調査の結果、十分調査が行えないと判断し、海外調査地については研究代表者が関わっているドミニカ共和国の事例を用いることとした。 三重県鳥羽市の「海島遊民クラブ」調査は2012年12月に行った。エコツーリズム推進体制における「中間組織」を対象に調査を実施した。今回の調査で明らかになったことは、当該地域における代表的な中間組織である「海島遊民くらぶ」が地域の中間システムに外部中間システムとして関与している実態であり、そこで両者がメリットを生み出す仕組みを構築していることを明らかにした。 長崎県佐世保市黒島の調査は2012年7月に実施した。島内ツアーに参与観察し、またツアー実施関係者からの聞き取りを行った。その結果、島外の旅行主催事業者が島内の関係者を連携させて、地域ツアーを形成し、その利益を経済的に還元する仕組みを構築しているが、仕組みが内部に個人的に移転されているだけで、黒島では地域側の中間システムの形成が十分ではないことが明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2011年度に震災で調査ができなくなった調査地域である福島県白河地域および福島県裏磐梯地域の代わりに、他の調査地域を調査したが、その準備や予備調査に時間がかかり、本格的調査が2012年度になった。そこで、代わりの調査地域である鳥羽市・知床地域・新潟県村上市についての追加調査を行った。また海外調査値はインドネシアボゴール知己の予備調査を行った結果十分な成果が上げられないと判断し、ドミニカ共和国プエルトプラタの事例を調査した。2013年度には変更した調査地域に関する成果も発表することが可能となるので、進捗状況としては当初の計画通りに回復できると考えている。 なお、昨年度の成果として、海外の学会での発表2件、国内発表1件、査読付き論文が3件であった。そのうち、国内学会では地域政策研究誌に本研究の直接的な成果である、中間システムの評価方法についての論文が掲載された。2013年度の長崎県佐世保市の調査結果からは、中間システムの地域還元の仕組みの形成についての成果がさらに得られるものと考えられる。なお、調査地域の長崎県佐世保市では、2013年5月に成果発表を地域で発表する研究会を開催予定であり、成果の社会還元の面でも当社小野震災の遅れは回復していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
震災で調査ができなくなった調査地域は別の調査地域に切り替えて調査する。2013年度は、北海道知床地域(原生自然の保全と活用のバランスを意識した観光まちづくり)、三重県鳥羽市(外部中間システムと地域中間システムの連携による地域還元)、長崎県佐世保市黒島(外部中間システムと地域関係者の協働による地域還元)及び五ヶ瀬町(ワインツーリズムに夜地域還元)を対象として調査する。 なお比較調査として、ドミニカ国プエルトプラタ地域の地域ツーリズムによる支援活動も調査しモデル化のための比較対象とする。長崎県黒島の調査は2013年6月に行い、地域支援組織としての外部中間システム、(株)させぼパール・シーの役割を分析する。 以上、現地フィールド調査では、中間システムの機能を担う組織・団体のガバナンスのあり方や、たんに地域資源を観光に活用するだけでなく、観光を通じて生み出された「交流」そのものの資源化の可能性や中間システムの成立までのプロセスについて、主要なアクターへの聞き取り調査や資料収集で分析する予定である。また、必要に応じて、地域住民を対象としたアンケート調査を実施し、地域還元の効果や観光まちづくりの推進による満足度などを調査する。 また、2013年度の共同研究会は、それぞれの調査対象地域での打ち合わせも含め計3回開催する。それぞれの共同研究会では申請者や関連する研究者だけでなく、地域主導の観光まちづくりを進める地域アクターにも出席・報告していただく。これによって調査内容を幅広く共有していくとともに、調査対象地域での地元研究会開催で研究成果の還元を図っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現地調査のための旅費および謝金、また聞き取り調査や文献データのデータベース化を進めるための謝金や委託費を計上する。さらに、現地調査及び事例分析を踏まえ、敷田が提示しているサーキットモデルや中間システムモデルなどを基本として、自然再生による地域社会の変容とその過程を包括的に評価するための理論的課題を抽出し、自然再生の社会的変化を評価するモデルを構築する作業を行うための研究会をワークショップとともに実施する。 なお、2012年度未使用額の発生理由は、震災の発生とその影響で予定していた東北の福島県白河地域および福島県裏磐梯地域の調査ができなくなったためであり、その分の執行が遅れている。そのこともあって、事前の研究者同士の共有のための研究会を先に開催して、研究計画の共有を図ったために全体の進行が遅れた。未使用額の使用計画については、2013年度に地域調査のに数と回数を増加することで使用する。また北海道内の資源の戦略的利用のケーススタディおよびその地域還元についてを調査対象に加えることで執行する。
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