2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23614016
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Research Institution | Nara Prefectual University |
Principal Investigator |
安村 克己 奈良県立大学, 地域創造学部, 教授 (00230243)
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Keywords | 観光まちづくり / 持続可能な観光 / 限界集落 / 実践 / 社会構想論 |
Research Abstract |
最終年度には、前年度に引き続き、山間地域に位置し限界集落化した、三重県A町と奈良県B町において、観光まちづくりの参与観察と住民の個人史の聞き取り調査を中心に現地調査を実施した。また、持続可能な観光と観光まちづくりに関する文献研究も並行してなされた。さらに、これまでの現地調査の結果が、持続可能な観光と観光まちづくりに関する理論的考察の結果を踏まえてまとめられた。 現地調査の結果では、両町における住民主体の観光まちづくりの実態から、持続可能な観光開発に関わる三つの動態性が剔出された。まず、まちづくりの過程において、地域社会の社会関係資本が、地縁で義務的・慣習的に結束する従来の結合型から、主体的な個人が強く連携するネットワーク型へと再編成されてきた。第二に、観光振興の実践を通して、住民が地域の自然と文化を日常的に保護し創造的に再構成している。最後に、観光振興による経済的収益の向上やその地域循環型機構の構築に苦心しながらも、食糧やエネルギーの地域自給が伝統的に達成されていて、その上に地域自給経済のしくみが模索されている。これらの三つ動態性は、持続可能性についての理論研究から導出された①自然・生態系と②対面的社会関係の基盤、そして③地域自給経済という持続可能な社会の成立要件に符合する。とりわけA町の観光まちづくりの実践は、すでに30数年を経過し、そこに最近は壮年Iターン移住者も加わり、持続可能な地域社会の形成に向けて一定の成果をあげてきた。こうした成果は、地方自治体から評価されると同時に、その地域政策の見直しに影響を与えている。 そして、研究期間全体を通した研究結果から、持続可能な観光による限界集落再生としての観光まちづくりには、地域住民のまちづくり実践が地方自治体や国の政策に影響を及ぼすような、ボトム-アップ型の持続可能な社会構想論のモデルとなる可能性がある、という結論がえられた。
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