2012 Fiscal Year Research-status Report
訪日外客市場における通訳ガイドサービスの評価尺度開発
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23614019
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
高井 典子 文教大学, 国際学部, 准教授 (90540435)
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Keywords | 訪日外客 / 通訳案内士 / サービス品質 / 尺度開発 |
Research Abstract |
本研究の目的は、我が国が推進する観光立国政策における訪日観光の現場を支える通訳案内士(以降、通訳ガイド)が提供するサービスの評価尺度の開発である。 前年度から行っている「通訳ガイドのサービス評価基準」についてのインタビュー調査を今年度も継続して実施した。このインタビューは多様な当事者による認識を吟味することを目的とし、今年度は複数の通訳ガイドへのグループインタビューに加え、通訳案内士団体幹部、国際会議コーディーネータ‐企業などへのインタビュー調査を実施した。 これらの調査を通して、旅行会社‐通訳案内士団体‐個々の通訳ガイドのあいだに複雑な力関係が存在することが推測された。旅行会社が企業であるのに対し、通訳ガイドは個人事業主であり、通訳案内士団体は同業組合的な存在である。これらの関係者間には、通常の企業間取引関係とは異なる知から関係が存在しており、通訳ガイドのサービス評価尺度を開発するプロセスにおいて、誰にとっての「よい通訳ガイドサービス」であるのか、という問いを避けて通ることはできないと考えられる。前年度の成果として「よいガイド」の定義が旅行会社と通訳ガイドでは異なることが明らかになったが、それと符合しており、通訳ガイドを巡る政治的・経済的な力関係を踏まえて、本研究を進める重要性を再認することができた。 今年度は外国人旅行者へのインタビュー調査も実施した。東京国際空港出国ロビーでの調査を試みたが、滞在中にガイドサービスを受けた人の出現率が低く、十分なデータを取ることができなかった。来年度の前半には別の方法でデータ収集を試みる予定である。 以上、今年度の実績として、通訳ガイドのサービス品質を一義的にとらえるのではなく、異なる立場から見た多様なサービス規準から成り立つ概念として再定義することにより、本研究の意義をより広い文脈に位置づけることができたと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
外国人旅行者へのインタビューが予定よりも遅れている。実際に日本を旅行中の旅行者、特に日本旅行終了直前のタイミングでの旅行者からのデータ収集が最も望ましいと考え、東京国際空港出国ロビーにて調査を実施したが、滞在中に通訳ガイドサービスを受けた人の出現率が低かったため、十分なデータを得ることができなかった。 来年度は観光庁・日本政府観光局の協力を仰ぎ、また別の方法(海外の調査会社のパネル利用、SNSを使ったウェブ調査など)も並行して試行して、外国人旅行者からのデータ収集を実施する予定である。 以上から、質問紙作成にも遅れが出ているが、平成25年度中に質問紙を完成し、年度末までに調査実施・データ収集までを終わらせる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の前半は、訪日外国人旅行者に対するインタビューを引き続き実施する予定である。日本国内での対面インタビューについては、観光庁・日本政府観光局が実施する「通訳案内士周知強化月間」のイベント等を利用したインタビューの実施に向けて調整を行う。加えて、海外の調査会社のパネルやSNSを活用したデータ収集等も試行する。そのうえで平成25年度後半には、これまでの関係者へのインタビュー調査から明らかになってきた通訳ガイドのサービス品質を巡る多様な認識をもとに、通訳ガイドのサービス評価尺度構築のための項目づくりを行う。質問紙に落とし込み、小規模なテストを実施したうえで、質問紙の修正を行い、年度末までに大規模調査を実施する。 次年度使用額が839,230円あるが、これは平成24年度に外国人旅行者へのインタビュー謝礼用に計上していたものが、調査において通訳ガイドサービスを経験した外国人旅行者の出現率が低かったため、ほとんど使用されなかったためである。平成25年度において、対面インタビューおよびウェブ上のデータ収集等において引き続き使用する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の前半においては、外国人旅行者へのインタビューおよびデータ収集が研究費の主な使途である。謝金、交通費、会場代、テープ起こし、翻訳費用等への支払いを予定している。また、ガイドを巡る最新の研究を捕捉するため英語論文購入にも充てたい。 平成25年度の後半においては、質問紙を用いた小規模なテスト調査および大規模調査を実施する。その際の回答者確保のために外部調査会社を利用、または直接確保の場合には謝金として研究費を使用する予定である。データ分析のためのソフトウェアのアップグレードも予定している。
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Research Products
(2 results)