2012 Fiscal Year Research-status Report
競争と協働のバランスを活かした観光まちづくりに関する社会学的実証研究
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23614020
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
金井 雅之 専修大学, 人間科学部, 教授 (60333944)
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Keywords | 観光まちづくり / 温泉地 / 社会関係資本 / 社会学 / 質問紙調査 |
Research Abstract |
2年目にあたる平成24年度は,引き続き先行する調査研究,特に平成19年度に特定地域の温泉地の旅館と旅館組合を対象におこなった質問紙調査の再分析をおこない,その成果を2012年8月に米国デンバーで開催された国際研究集会(第5回日米数理社会学合同会議)で報告した.社会ネットワーク分析の手法を応用して温泉地内部での宿泊施設同士の関係性を複数の温泉地で比較分析した結果,競争と協働という本科研のテーマに照らしたときに,全体として競争的側面よりも協働的側面が強くみられることが確認された. また,上述の先行調査に含まれていなかった地域の観光地の実情と課題を探って全国調査の設計に反映させるために,九州地方と四国地方を中心に複数の温泉地や観光地を視察するとともに,観光まちづくりの当事者や専門家からの聞き取りをおこなった.これらから確認できたのは,観光まちづくりの現実はその地域の地理的・文化的・人的条件等によって実に多様であること,成功例として注目を集める実践はしばしば当初から計画的に狙ったものではなく偶然のきっかけで生じたものであること,にもかかわらず結果的にうまくいっている事例には多様な主体の協働を生み出す仕組みが共通してみられることなどであった.これらのことは,観光まちづくりの結果よりも過程に注目することを通じて,個別事例の記述でも制度的背景を無視した抽象的な一般法則の探求でもない方法を目指す,という本科研の目標の妥当性を示している.これらの成果は論文として平成25年度初頭に公刊される予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初24年度におこなう予定だった全国調査を延期している.これは,東日本大震災等による国内および外国からの旅行客の変動の推移を注意深く見守ったうえでの判断である.旅行客の入り込みは24年度後半にようやくおおむね震災前の水準に戻ったものの,調査では調査時点前の一定期間内の状況をたずねる質問が多いため,急激な変動の直後に調査をおこなうことは適切ではないと判断したからである.
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は最終年度なので,繁忙期を避けた時期に全国調査を実施する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
全国調査の延期によって執行を留保していた研究費とあわせ,調査実施費用と旅費(聞き取りおよび成果報告)を中心に執行していく.
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Research Products
(2 results)