2011 Fiscal Year Research-status Report
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23614022
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
山田 晴通 東京経済大学, コミュニケーション学部, 教授 (40191324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東谷 護 成城大学, 文芸学部, 准教授 (10453656)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ポピュラー音楽 / 観光 / 博物館 / 社会教育 / 地域振興 |
Research Abstract |
研究初年度にあたる平成23年度には、日常的に関連する文献、資料等の収集にあたるとともに、日本国内および米国において、ポピュラー音楽に関わる各種の展示施設への訪問に重点を置いた現地調査を実施した。研究代表者・山田は、国内では岩手県北上市(7月)、福岡県大川市など西日本各地(8月)、米国ではクリーブランド、デトロイト等中西部の諸都市や、ミネソタ州、ニューヨーク州のアップステイト(ニューヨーク大都市圏外の内陸部)各地(9月)で、ポピュラー音楽の歴史に関わる博物館、記念館、史跡などのべ20館以上を現地調査し、各地の地元図書館・大学図書館等で資料収集にあたるとともに、博物館等の観光資源としての利用状況などについて施設関係者への聞き取りをおこなった。研究分担者・東谷は、山田とともにミネソタ州およびニューヨーク州で、資料収集、聞き取りを中心とした共同調査を行い、現地討論を重ねた。両者は、現地調査以外の機会にも研究連絡、討議の場を確保し、資料整理から得た知見の共有に努めている。こうした調査や資料の検討を通して、展示施設等の観光資源化に関して、米国における多様な取り組みについての知見が蓄積されるとともに、そこには多様性とともに、一定の類型化が可能な、複数の施設の間の共通性も見いだせることが明らかになってきた。これらの研究成果の一部は、既に山田による学会発表および勤務校の紀要論文として年度内に公表されているが、さらに山田、東谷それぞれの論文の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の推進に参考となる基礎的な文献については、おおむね順調に収集、消化できている。ただし、観光研究が多分野にまたがる性格をもつことから、もとより網羅的な掌握は困難であり、また本研究においては先行研究文献の網羅的把握を目指すものではない。平成23年度においては、東日本大震災の影響等により、特に年度後半において、日程上、現地調査に割ける時間の確保が困難になった。このため、現地調査にかける日数の圧縮などがあり、やや不十分な現地調査体制となった咸が否めない。しかし、日本および米国における現地調査からは、事前の予想を超える豊かな知見が蓄積された。その中から、日米それぞれが、展示施設の特徴に共通したいくつかのパターンをもっていることや、そのパーターン自体は、日米の制度的ないし文化的背景の違いを反映して、かなり異なる構造をもっていることが明らかになってきた。一般的に、米国においては各種の展示施設等の観光資源としての活用は、日本よりも進んでいるものと見なせるが、その背景には容易には日本の状況への応用が難しい要素が多々ある。しかし、同時に、技術的な側面では、日本の事例にも応用できる工夫が様々な形で存在していることも確認できた。その一端は「規模と立地」という観点から山田が論文として公刊したが、まだ、アイデアなり未検証の仮説の段階に留まっているものもあり、今後の(同じ調査対象に対する)追加調査や、事例の積み上げを通して、より多くの仮説を検証し、有効な政策提言に繋げて行く必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に現地調査を行った施設のうち、追加調査を行う必要があると判断される施設を選定し、再度訪問して聞き取りを行う。具体的にその候補として検討中であるものの例としては、クリーブランドのロックの殿堂博物館、ニューヨーク州ベセルのベセルウッド芸術センター、ニューヨーク州ビーコンのスループ・クリアウォーター財団などが挙げられる。また、現時点で(本研究外も含めて、研究に参加する両名のいずれもが)現地を訪れていない主要な施設について、可能な範囲で現地調査を行い、検討対象事例を積み上げることにも努める。山田については、1回ないし2回の渡米機会をもち、のべ3週間以上滞在して現地調査を行うことを調整中である。東谷については昨年同様、山田の調査の一部に同行し、共同調査を実施することを予定している。特に、ニューヨーク州アップステート地域の調査については、従来から東谷が研究実績を積んできたフォークソング・リバイバル運動などの音楽文化に関する事例をとりあげることになるため、共同調査を行う必要性が高いものと判断している。国内の施設については、既に主要な、また、典型的と考えられる既存施設については現地調査を行ったと判断しているが、未調査の重要事例も東北日本などに存在しており、引き続き、(他の研究資金の活用も図りながら)調査対象の積み上げを図っていく。以上に記した現地調査への取り組みに加え、平成24年度においても、文献・資料収集を通した知見の蓄積を進めるとともに、研究代表者・分担者の連絡を一層密にして、論文執筆に向けた議論の機会を増やしていく。さらに、学会や、他の研究プロジェクトとの合同研究会などの機会を通して成果の発表に、徐々に重点を移していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度においては、東日本大震災の影響で、大学の教育関係業務の日程が大幅に変更されたこと、連動して学会活動等の定常的研究活動に関する業務も年度後半に負荷がましたこと、さらに、年度途中まで、支給される研究費の減額の可能性があったため、早い時期における研究費全額の執行は困難な状況であり、また年度内の遅い時期には、並行して研究分担者として受給していた(年度をまたいで繰り越せない)科学研究費補助金の執行(おもに現地調査の実施によって執行すべき性格のもの)に時間を割かざるを得ず、本件助成金については総額の8%程度の繰り越しをすることとなった。繰り越した分については、前項目に概要を記した平成24年度における現地調査について、現地滞在日数を積み上げるなどして有効に活用していく。なお、繰り越し分については、研究代表者である山田が全額を執行する予定である。これは平成23年度における繰り越しが、山田の執行分から生じていることを踏まえた措置である。平成24年度においても、当初計画に準じ、また平成23年度分の執行状況と同様に、現地調査のための旅費の比重が大きくなる。また、成果発表の機会が昨年より若干増加する見込みであるため、このための国内旅費が生じることも見込まれる。
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