2012 Fiscal Year Research-status Report
観光資源の社会学―世界文化遺産をめざす地域社会の取り組みより―
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23614031
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
今井 信雄 関西学院大学, 社会学部, 准教授 (60379485)
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Keywords | 観光資源 |
Research Abstract |
本研究の調査対象は2010年の段階での、国内暫定リスト地域のすべてであるが、平成24年度は、群馬県「富岡製糸場と絹遺産群」、長崎県の「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」、新潟県「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」に関するフィールドワークを行い、その他の暫定リストについては資料収集を行った。とくに、「群馬県富岡製糸場と絹遺産群」については、世界文化遺産登録が近いのではないかと言われており、地域住民の参与や地元ボランティア団体の動きが活発化している。「富岡製糸場と絹遺産群」を中心的な研究フィールドとし、その他の世界遺産暫定リストとの比較を行うことで、地域社会にとって世界文化遺産が持つ社会学的な意味がより明確になると考えられる。 また、「平泉―仏国土(浄土)を表す建築・庭園および考古学的遺産群―」については、平成24年度はフィールド調査を行うことはなかったが、平成25年度は地元の関係者への聞き取りを行い、新しく世界文化遺産に登録されたことでどのような変化が起きてきたのか、ということについて、研究を進めていく予定である。佐渡金銀山についても、観光資源化を考える上で重要な地域として考えられる。というのは、佐渡金銀山の資源化とともに、他の遺産(たとえば佐渡奉行所)の復元なども行われており、ある対象の資源化がすすむことが、他の資源化をも促す事例として考えられる。資料収集もある程度すすみ、平成25年度のあいだに、複数の媒体で論文執筆を進め、最終年度への研究へとつなげていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は「地域の歴史」がどのように観光資源となっていくか、ということについて研究するものであるが、すでに世界文化遺産に登録された「平泉」、登録が近いのではないかと言われている「富岡製糸場」、そして、近隣への資源化を促す「佐渡金銀山」という、3つの特徴ある観光資源化のプロセスを明らかにする枠組みが形成された。そのなかで、今後進めていくべきは「群」としての遺産化の問題である。これは、本研究が次のステージに向かったことを示している。それゆえ、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
「平泉」「富岡製糸場」「佐渡金銀山」を重点地区とし、「群」として考える上で重要な「キリスト教関連施設」を加えて4つの地区についてフィールド調査が行われている。それら全体の枠組みとなるような地点を再び調査しつつ、他の調査地についてもフィールド調査を行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、調査先のスケジュールと研究代表者の調査予定が合わないことがあり、それらの予定を次年度に行うこととしたため、平成25年度への繰越金が生じている。実地調査による一次資料の収集とインタビューデータを重視しているので、平成25年度は調査旅費への経費割合が大きくなっている。フィールド調査に関する費用と資料収集に関する費用を主な研究費として予定している。
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