2011 Fiscal Year Research-status Report
イオンの輸送を全て水で行う環境低負荷型イオン分析システムの開発
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23615003
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
森 勝伸 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70400786)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | クロマトグラフィー / イオン / 分離 / 抽出 / 環境低負荷 / 環境計測 / 安全環境計測法 |
Research Abstract |
本研究は,工場排水や血液等の高分子を含む試料からイオンを選択的に抽出する前処理からイオンクロマトグラフィー(IC)による分析までを全て水で行う究極的なICシステムの開発を目的に, 1)クリック反応を利用したテーラーメイド型イオン分離カラムの開発と2)イオン透析膜に選択的にイオンを抽出できるイオン抽出セルの開発を試みた.1)分離カラム:本研究では,アジド化したODSとアルキン化したCHAPSをクリック反応により化学結合させたカラム(1)を構築し,Fugetzuらが提唱した静電型ICで用いる分離カラム(2)(スルホベタイン型の両イオン性界面活性剤CHAPSをODS上に物理的に固定化したカラム)と比較した.その結果,カラム1と水溶離液の組合せにおいて硫酸,塩化物及び硝酸イオンの分離に成功したが,理論段数は2000~4500段と2を用いたとき(3700~6800段)と比べ低かった.これについて種々検討した結果,表面に固定化されたCHAPSの量が影響していることが明らかとなった.2)イオン抽出セル:はじめに,イオン抽出セル(IEC)を本研究開始前に設計した方法に従い構築し,IECに通液する流速の影響及び印加する電圧の影響を調べた.流速においては,IECに15 V印加したときの試料通液部,陽イオン抽出部(CE)及び陰イオン抽出部(AE)への通液速度を変化させて検討した.このとき,試料通液部には塩の混合試料を,CE及びAEには純水を通液した.その結果,全て同じ流速(0.3 mL/min)で通水したときが最も試料溶液から陽イオン及び陰イオンを選択的に抽出できることが分った.次に,IECに印加する電圧の影響を調べた結果,10 V以上の印加で陽イオン及び陰イオンをCE及びAEにそれぞれ定量的に抽出できることが分った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度での研究計画では,1)イオン分離カラムの開発及び2)イオン抽出セルの開発を重点的に行うことを目標に,研究が実施された.1)では研究実績の概要にも記したように,クリック反応により構築したカラムが,水溶離液でも陰イオンを分離できたことから当初の計画以上に進展していると判断される.ただし,今年度において水溶離液により陽イオンを分離する機構が不十分であるため,平成24年度での計画に含め,課題克服に努めたい.一方,2)では試料に含まれるイオンの選択的かつ定量的な抽出が可能であったが,イオン抽出セル内のイオン交換膜が破れるため,イオン抽出セルの再構築が必要であり,計画よりもやや遅れていると判断する.以上を総合的に判断した結果,「おおむね順調に進展している」と結論する.
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Strategy for Future Research Activity |
1.イオン抽出セルの最適化を実施する.平成23年度の課題(イオン交換膜の破損)を踏まえ,イオン交換膜の膜厚,形状を見直す.また,流速及び印加電圧の最適化を実施するとともに,分析結果の再現性と長期作動(少なくとも100回繰返し)での耐久性を確認する.これを基に,イオン抽出セルの最適化を行う.また,イオン抽出セルのポテンシャルを確認するため,無機陽イオン及び陰イオンの他に,ギ酸や酢酸等の低級脂肪酸,アンモニウムやアルキルアミン等の弱塩基性陽イオンに対する抽出効率を調べ,分離カラムに接続する前の基礎資料を得る.この研究期間は当初の計画通り平成24年12月末までを目標にする.2.分離カラムの最適化を行う.昨年度構築した分離カラムによって分離されたイオンの理論段数を向上させるため,ODSシリカの粒径,水溶離液の流速,固定化する両イオン性界面活性剤の種類の検討を行い,最終的なイオン分離カラムを選定する.特に,水溶離液により陽イオンを分離するカラムの構築が重点課題になる.この研究期間は当初の計画通り平成24年12月末までを目標にする.3.イオン抽出セルと分離カラムを接続する.分離カラムへの輸送効率,分離能及び検出感度の影響を調べ,その結果に基づき,上記1と2の改善策にフィードバックする.研究期間は,平成24年11月から平成25年3月まで行い,その間に特許出願の準備も行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究では,今年度の研究費に使用について,以下のような計画で行う予定である.(1)設備備品費(190千円):ペリスタリックポンプ (M&S Instruments 製・ミニパルスエボリューション)(1×@190千円)・・・イオン抽出セルとカラムを接続した際に,複数のポンプで水を輸送する必要があるが,購入予定のペリスリックポンプは1台で複数の流路を形成することが可能であるため,実験効率を重視し,今回計上した.(2)消耗品費(560千円):内訳 カラム160千円,試薬類120千円,実験機材180千円,ガラス器材100千円・・・本研究で開発する装置の周辺で利用する配管,接続部品の他に,カラムの充填剤を合成するために用いる試薬類及び器材を計上した.(3)旅費(国内旅費)(280千円):内訳 【研究打ち合わせ】(熊本大学・広島大学)3日間100千円.【学会発表】定期年会(金沢市)3日間70千円,討論会(鹿児島市)4日間110千円(4)その他(170千円):会議費30千円,印刷費60千円,成果発表費用80千円
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Research Products
(17 results)